こんにちはコーヤです。
このページでは行基本変形の3種類を勉強します。ランクの計算や掃き出し法に使われる重要な変形です。
行基本変形の立ち位置
行基本変形を勉強したら問題が解けるようになるという感じではなく、問題を解くために必要なランクや掃き出し法の事前準備のために行う勉強です。
このページだけ読んで行基本変形のルールを覚えるというより、ランクや掃き出し法の勉強で困ったときにこのページを読み返すぐらいで十分だと思います。
行基本変形3種類
変形ルールは全部で3つあります。
- 2つの行を入れ替える
- 1つの行をスカラー倍する
- 1つの行をスカラー倍して他の行に足す
それでは1つずつ見ていきましょう。
Rule1. 2つの行を入れ替える
$$
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
x & y & z\\
d & e & f
\end{pmatrix}
$$
2行目と3行目を入れ替えました。
入れ替えたい行は自由に選べます。2つ行を選んで成分全部を入れ替えましょう。
Rule2. 1つの行をスカラー倍する
$$
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
kx & ky & kz
\end{pmatrix}
$$
3行目を$k$倍しました。
スカラー倍したい行は自由に選べます。何倍にするかも自由です。
Rule3. 1つの行をスカラー倍して他の行に足す
$$
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d+kx & e+ky & f+kz\\
x & y & z
\end{pmatrix}
$$
3行目を$k$倍して2行目に足しました。
足し算する2行はどこの行を選んでもOKです。足す前に何倍するかも自由です。
列基本変形3種類
行基本変形の3つのルールは列に適用することもできます。列基本変形といいます。
Rule1. 2つの列を入れ替える
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & x & b\\
d & y & e\\
g & z & h
\end{pmatrix}
$$
Rule2. 1つの列をスカラー倍する
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b & kx\\
d & e & ky\\
g & h & kz
\end{pmatrix}
$$
Rule3. 1つの列をスカラー倍して他の列に足す
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b+kx & x\\
d & e+ky & y\\
g & h+kz & z
\end{pmatrix}
$$
基本変形と基本行列
行基本変形と列基本変形は、基本行列という行列を使った積の形で表現することができます。
ここより下は基本変形の数学的な解説です。知らなくても基本変形はできるので、流し読みしてください。
基本行列3種類
基本行列は$P,Q,R$の3種類があります。
基本行列$P$
$$
P_n(i,j)
=
\begin{pmatrix}
1 & & \vdots & & \vdots & & \\
& \ddots & \vdots & & \vdots & & \\
\cdots & \cdots & 0 & \cdots & 1 & \cdots & \cdots \\
& & \vdots & \ddots & \vdots & & \\
\cdots & \cdots & 1 & \cdots & 0 & \cdots & \cdots \\
& & \vdots & & \vdots & \ddots & \\
& & \vdots & & \vdots & & 1 \\
\end{pmatrix}
$$
$n$次の基本行列$P$は$P_n(i,j)$と表されます。
$n$次の単位行列$E$に対し「$i$行目と$j$行目を入れ替えた」のが$P_n(i,j)$です。
$n$次の単位行列$E$に対し「$i$列目と$j$列目を入れ替えた」としても$P_n(i,j)$になります。
基本行列$Q$
$$
Q_n(i;k)
=
\begin{pmatrix}
1 & & & \vdots & & & \\
& \ddots & & \vdots & & & \\
& & 1 & \vdots & & & \\
\cdots & \cdots & \cdots & k & \cdots & \cdots & \cdots \\
& & & \vdots & 1 & & \\
& & & \vdots & & \ddots & \\
& & & \vdots & & & 1\\
\end{pmatrix}
$$
$n$次の基本行列$Q$は$Q_n(i;k)$と表されます。
$n$次の単位行列$E$に対し「$i$行$i$列の成分を$k$にした」のが$Q_n(i;k)$です。
基本行列$R$
$$
R_n(i,j;k)
=
\begin{pmatrix}
1 & & & & \vdots & & \\
& \ddots & & & \vdots & & \\
\cdots & \cdots & 1 & \cdots & k & \cdots & \cdots \\
& & & \ddots & \vdots & & \\
& & & & 1 & & \\
& & & & \vdots & \ddots & \\
& & & & \vdots & & 1 \\
\end{pmatrix}
$$
$n$次の基本行列$R$は$R_n(i,j;k)$と表されます。
$n$次の単位行列$E$に対し「$i$行$j$列の成分を$k$にした」のが$R_n(i,j;k)$です。
基本行列の使い方
これらの基本行列を左からかけると行基本変形、右からかけると列基本変形になります。
上で紹介したルールを基本行列との積で表現すると以下のようになります。
Rule1. 2つの行or列を入れ替える
$2$行目と$3$行目を入れ替えるときは$P_n(2,3)$を左からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
x & y & z\\
d & e & f
\end{pmatrix}
$$
$2$列目と$3$列目を入れ替えるときは$P_n(2,3)$を右からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 0 & 1\\
0 & 1 & 0
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & x & b\\
d & y & e\\
g & z & h
\end{pmatrix}
$$
Rule2. 1つの行or列をスカラー倍する
$3$行目を$k$倍するときは$Q_n(3;k)$を左からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & k
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
kx & ky & kz
\end{pmatrix}
$$
$3$列目を$k$倍するときは$Q_n(3;k)$を右からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & 0 & k
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & b & kx\\
d & e & ky\\
g & h & kz
\end{pmatrix}
$$
Rule3. 1つの行or列をスカラー倍して他の行or列に足す
$3$行目を$k$倍して$2$行目に足すときは$R_n(2,3;k)$を左からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & k\\
0 & 0 & 1
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d & e & f\\
x & y & z
\end{pmatrix}
\Rightarrow
\begin{pmatrix}
a & b & c\\
d+kx & e+ky & f+kz\\
x & y & z
\end{pmatrix}
$$
$3$列目を$k$倍して$2$列目に足すときは$R_n(3,2;k)$を右からかけます。
$$
\begin{pmatrix}
a & b & x\\
d & e & y\\
g & h & z
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0\\
0 & 1 & 0\\
0 & k & 1
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
a & b+kx & x\\
d & e+ky & y\\
g & h+kz & z
\end{pmatrix}
$$
まとめ
基本変形は3つのルールがあります。
- 2つの行or列を入れ替える
- 1つの行or列をスカラー倍する
- 1つの行or列をスカラー倍して他の行or列に足す
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