エルミート行列の対角化

こんにちはコーヤです。

このページではユニタリ行列を使用してエルミート行列の対角化を行います。ついに行列は複素数の世界へ突入します。

複素行列の対角化

今までは実数の行列を対角化していましたが、このページでは複素数の行列を対角化します。

「直交行列を用いて対称行列を対角化」する計算を複素数に拡張して、「ユニタリ行列を用いてエルミート行列を対角化」する計算をやってみましょう。

随伴行列の作り方

エルミート行列、ユニタリ行列の性質を表す随伴行列について少し触れておきます。

行列Aの随伴行列はAと表され、作り方は「転置&共役」をするだけです。

A=(1+i22i3+3i44i)

のとき随伴行列は

A=(1i3+3i22i4+4i)

となります。

転置してから共役をとっても、共役をとってから転置しても結果は同じです。

エルミート行列・ユニタリ行列の性質

エルミート行列H

H=H

を満たす行列のことです。

ユニタリ行列U

U=U1

を満たす行列のことです。

随伴行列は「転置&共役」なので、行列の成分が全て実数のとき随伴行列は転置行列と同じになります。

つまり、エルミート行列の成分が全て実数のときは対称行列となり、ユニタリ行列の成分が全て実数のときは直交行列となります。

直交行列を用いた対角化ではtUSU=Dという形になりましたが、ユニタリ行列を用いた対角化ではUSU=Dとなります。

複素ベクトルのノルムの計算方法

エルミート行列は成分に複素数があるので、固有ベクトルが複素ベクトルになる可能性があります。

固有ベクトルを正規化する時にベクトルのノルムを計算しないといけないので、複素ベクトルのノルムの計算方法から勉強します。

複素ベクトルvのノルムv

v=tvv¯

で求まります。公式みたいなものなので覚えちゃいましょう。

v=(11+2i)

とすると

v=tvv¯=(11+2i)(112i)=6

です。

実際に手計算する時は、各成分の絶対値を求めてから実ベクトルのノルムと同じように計算したほうが楽だったりします。

上の例だと第一成分の絶対値は|1|=1です。第二成分の絶対値は|12i|=5です。

v=(11+2i)=(15)=6

という感じです。

対角化計算の具体例

では具体的な対角化の計算を見ていきます。対角化の4ステップに沿ってやっていきます。

今回は以下のエルミート行列を対角化します。

H=(312i1+2i1)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Hの固有方程式は

det(HλE)=|3λ12i1+2i1λ|=(λ+2)(λ4)

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=2λ2=4

v1=k1(11+2i)v2=k2(12i1)

です。

複素数が入っても計算のやり方は変わりません。

Step2. 対角化可能か判定する

エルミート行列は必ず対角化可能です。判定の必要はありません。

対角行列D

D=(λ100λ2)=(2004)

となります。

Step3. ユニタリ行列Uを作る

ユニタリ行列Uは固有ベクトルを正規化してから作ります。正規化しないとU=U1を満たさなくなってしまうので注意です。

まずはv1を正規化します。ノルムの計算はページ前半でやりましたね。

v1=k1(11+2i)

これよりv1のノルムv1

v1=6k1

です。したがって

u1=v1v1=16(11+2i)

となります。

同様にv2も正規化します。

v2=6k2

なので

u2=v2v2=16(12i1)

となります。

したがってユニタリ行列U

U=16(112i1+2i1)

となります。

Step4. 随伴行列Uを作る

Uの随伴行列Uを用意します。

U=16(112i1+2i1)

です。

最終的に対角化の式USU=Dに代入して

16(112i1+2i1)(312i1+2i1)(112i1+2i1)=(2004)

となり対角化完了です。

まとめ

エルミート行列Hはユニタリ行列Uで対角化可能です。

対角化する式は以下の式です。

UHU=D

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