こんにちはコーヤです。
このページでは対角化できない行列を「対角化っぽく」する、ジョルダン標準形という形への変形を勉強します。
ジョルダン標準形の目的
ジョルダン標準形の目的は対角化できない行列を「対角化っぽく」変形するためです。
「対角化っぽく」だと基準が曖昧になってしまうので、対角化っぽいとみなせる形を決めてしまい、その形のことをジョルダン標準形と呼びます。
それでは具体的にジョルダン標準形の形を見ていきましょう。
ジョルダン細胞とジョルダン標準形
ジョルダン標準形の前に、まずはジョルダン細胞の形から勉強します。
こんな感じで、対角成分の右上が1になっている行列をジョルダン細胞と呼びます。
このジョルダン細胞を対角成分に持つ対角行列がジョルダン標準形になります。
以下の行列
0ばっかりで見にくいですが、右上と左下の0を非表示にすると
となるので
このようにジョルダン細胞を使った対角行列にできました。なので行列
また、このように表現することもあります。
普通の対角行列もジョルダン標準形とみなすことができます。
1次のジョルダン細胞だけで表せるジョルダン標準形が対角行列になります。
ジョルダン標準形の計算4ステップ
それでは具体例なジョルダン標準形に変形する計算を見ていきます。対角化の4ステップに沿ってやっていきます。
このページはジョルダン標準形がテーマなので対角化できない行列を例に挙げますが、実践では対角化できるかどうか分からない状態で計算スタートします。
まずは対角化に向かって進んでいき、対角化できないと判明したらジョルダン標準形に進路変更しましょう。
以下の具体例では最初は対角化に向かって進み、途中でジョルダン標準形に切り替える流れで計算します。
今回は以下の行列
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
行列
本当は以下のような対角行列
Step3. 変換行列 を作る
本来だったら固有ベクトル
仕方ないので別のベクトル
さて、固有ベクトル
不足分を補うベクトル
このルールに従って
として
この計算結果を
に代入して
これは非同次連立1次方程式の形になっています。拡大係数行列は以下のようになります。
これは自由度1なので任意定数1個で
任意定数を
となります。
それでは不足分のベクトルも得られたので変換行列
今回は
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
高次のジョルダン標準形に向けて
2次のジョルダン標準形の変形の計算が終わりました。計算の雰囲気は感じとっていただけたかと思います。
対角化の計算と異なるのはステップ3の部分で、固有ベクトルの不足分を補うベクトルを作るところです。
2次のジョルダン標準形は式(2)を満たすように追加のベクトルを作ればOKですが、3次以降のジョルダン標準形では式(2)以外のパターンも存在します。
ここから3次以降のジョルダン標準形の計算に向けての補足説明をします。
広義固有ベクトル
上の例では固有ベクトル
このベクトル
固有ベクトル
ジョルダン鎖
上の例では式(2)のように固有ベクトル
つまり固有ベクトルと広義固有ベクトルは関連付けられているとも言えます。
この関連のことを鎖でつながっているイメージで捉え、ジョルダン鎖と呼ばれています。
広義固有ベクトルの求め方として式(2)と式(3)で2パターンあるように思えますが、2式は同じ意味を表しています。
式(2)の両辺に
この右辺に式(1)を代入すると
これは式(3)の
鎖のイメージなので広義固有ベクトルの関連付けは連鎖していきます。式で表すと以下のようになります。
2次のジョルダン標準形では広義固有ベクトルが1つ求まればOKなのでジョルダン鎖を意識する必要はありませんが、高次になると複数の広義固有ベクトルが必要になる場合があります。
その時はジョルダン鎖を満たすように広義固有ベクトルを見つけていけばジョルダン標準形への変換行列が作れます。
まとめ
対角化できないと判明したら、ジョルダン標準形へ進路変更しましょう。
固有ベクトル
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