こんにちはコーヤです。
このページでは、2変数関数の極限の計算方法を勉強します。1変数関数では曲線の極限を扱いましたが、2変数関数では曲面の極限を扱います。
1変数関数の極限との違い
1変数関数で$x\to a$の極限は$x\to a-0$と$x\to a+0$の2通りの近づき方しかなく、2通りで求めた極限の値が一致したらその値を極限としていました。
2変数関数では$(x,y)\to(a,b)$の極限は近づき方が無限にあります。全ての近づき方で極限が一致しないと、極限値として扱えません。
原点に近づく極限の計算方法
$(x,y)\to (0,0)$と原点での極限の計算方法を考えます。
極限値があるかどうかの確認方法は2つあります。
- 直線$y=mx$を使うパターン
- 極座標$(r,\theta)$を使うパターン
直線$y=mx$を使うパターンでは、$y=mx$上を移動する点が原点に近づいたときの極限を調べます。
傾き$m$の値によらず一定の値となった場合、どんな近づき方をしても一定の値であるため極限値として扱えます。
極座標$(r,\theta)$を使うパターンでは、点$(r,\theta)$の$r\to 0$の極限を調べます。
偏角$\theta$の値によらず一定の値となった場合、どんな近づき方をしても一定の値であるため極限値として扱えます。
直線でも極座標でも計算結果は同じになります。計算しやすい方を選んでください。
2変数関数の極限の例題
それでは例題2つで関数の極限を求めてみましょう。
例題1
$$
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{x^2y^2}{x^2+y^2}
$$
この曲面の極限を計算します。
直線$y=mx$を使うパターンで計算すると
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{x^2y^2}{x^2+y^2}
&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{x^2\cdot m^2x^2}{x^2+m^2x^2}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{m^2x^4}{(1+m^2)x^2}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{m^2}{1+m^2}x^2
\\\\&=
0
\end{align}
$$
となり、極限値が求まります。
極座標$(r,\theta)$を使うパターンで計算すると
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{x^2y^2}{x^2+y^2}
&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
\displaystyle\frac{r^2 \cos^2 \theta \cdot r^2 \sin^2 \theta}{r^2 \cos^2 \theta+r^2 \sin^2 \theta}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
\displaystyle\frac{r^4 \cos^2 \theta \sin^2 \theta}{r^2(\cos^2 \theta + \sin^2 \theta)}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
r^2 \cos^2 \theta \sin^2 \theta
\\\\&=
0
\end{align}
$$
となり、極限値が求まります。
例題2
$$
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{xy}{x^2+y^2}
$$
この曲面の極限を計算します。
直線$y=mx$を使うパターンで計算すると
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{xy}{x^2+y^2}
&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{x\cdot mx}{x^2+m^2x^2}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{mx^2}{(1+m^2)x^2}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\displaystyle\frac{m^2}{1+m^2}
\\\\&=
\displaystyle\frac{m^2}{1+m^2}
\end{align}
$$
となり、$m$の値によって計算結果の値が変化するので極限なしです。
極座標$(r,\theta)$を使うパターンで計算すると
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{xy}{x^2+y^2}
&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
\displaystyle\frac{r \cos \theta \cdot r \sin \theta}{r^2 \cos^2 \theta+r^2 \sin^2 \theta}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
\displaystyle\frac{r^2 \cos \theta \sin \theta}{r^2(\cos^2 \theta + \sin^2 \theta)}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{r\to 0}
\cos^2 \theta \sin^2 \theta
\\\\&=
\cos^2 \theta \sin^2 \theta
\end{align}
$$
となり、$\theta$の値によって計算結果の値が変化するので極限なしです。
原点以外での極限の計算方法
ここまで原点での極限について考えてきましたが、もちろん原点以外での極限も調べないといけない場面があります。
$(x,y)\to (a,b)$の極限を調べるときは
$$
\begin{align}
u&=x-a
\\\\
v&=y-b
\end{align}
$$
と変数を作って
$$
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (a,b)}
f(x,y)
=
\displaystyle\lim_{(u,v)\to (0,0)}
f\left( (u+a),(v+b) \right)
$$
として計算すると、原点での極限に帰着できます。
例題3
$$
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (1,2)}
\displaystyle\frac{xy-2x-y+2}{x^2-2x+y^2-4y+5}
$$
$u=x-1$と$v=y-2$を代入して
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{(x,y)\to (1,2)}
\displaystyle\frac{xy-2x-y+2}{x^2-2x+y^2-4y+5}
&=
\displaystyle\lim_{(u,v)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{(u+1)(v+2)-2(u+1)-(v+2)+2}{(u+1)^2-2(u+1)+(v+2)^2-4(v+2)+5}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{(u,v)\to (0,0)}
\displaystyle\frac{uv}{u^2+v^2}
\end{align}
$$
原点の極限に帰着できました。
この形は例題2で解いています。解は極限なしです。
まとめ
2変数関数の極限値があるかどうかの確認方法は2つあります。
- 直線$y=mx$を使うパターン
- 極座標$(r,\theta)$を使うパターン
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