偏微分の意味と計算方法

こんにちはコーヤです。

このページでは、多変数関数に含まれる変数のうちの1つ変数に注目して微分する、偏微分の意味と計算方法を勉強します。

※普通の微分と偏微分を区別するために、普通の微分のことを「常微分」と記載します。

常微分と偏微分の違い

常微分と比べながら偏微分の意味を確認します。

常微分の意味

$x$が$\Delta x$だけ変化した時の$y$の変化量$\Delta y$は

$$
\Delta y
=
f(x+\Delta x)-f(x)
$$

なので、平均変化率は

$$
\displaystyle\frac{\Delta y}{\Delta x}
=
\displaystyle\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}
$$

であり、ここで$\Delta x \to 0$のとき

$$
\displaystyle\frac{dy}{dx}
=
\displaystyle\lim_{\Delta x \to 0}
\displaystyle\frac{f(x+\Delta x)-f(x)}{\Delta x}
$$

となる。

偏微分の意味

$x$が$\Delta x$だけ変化した時の$z$の変化量$\Delta z$は

$$
\Delta z
=
f(x+\Delta x,y)-f(x,y)
$$

なので、平均変化率は

$$
\displaystyle\frac{\Delta z}{\Delta x}
=
\displaystyle\frac{f(x+\Delta x,y)-f(x,y)}{\Delta x}
$$

であり、ここで$\Delta x \to 0$のとき

$$
\displaystyle\frac{\partial z}{\partial x}
=
\displaystyle\lim_{\Delta x \to 0}
\displaystyle\frac{f(x+\Delta x,y)-f(x,y)}{\Delta x}
$$

となる。

偏微分の意味は以上です。常微分と同じ計算です。

偏微分の表現方法

偏微分には$\partial$という記号を使います。常微分の$d$に当たる記号で、「常微分ではなく偏微分をしている」ことを表すために$d$から$\partial$に変えています。

読み方はデル、ラウンド、ラウンドディー、パーシャル、など様々ありますので、好きな呼び方で呼んでください。

$dx$の「ディーエックス」と同じように$\partial x$は「デルエックス」と言うのが一般的かと思います。

1変数関数$f(x)$の導関数の表現方法は下のように様々な方法がありました。

$$
\begin{array}{ccccc}
f'(x)
& , &
\displaystyle\frac{df}{dx}
& , &
\displaystyle\frac{d}{dx}f(x)
\end{array}
$$

同様に2変数関数$f(x,y)$の偏導関数の表現方法は下のように様々な方法があります。上段が$x$での偏微分、下段が$y$での偏微分です。

$$
\begin{array}{ccccc}
f_x(x,y)
& , &
\displaystyle\frac{\partial f}{\partial x}
& , &
\displaystyle\frac{\partial}{\partial x}f(x,y)
\\\\
f_y(x,y)
& , &
\displaystyle\frac{\partial f}{\partial y}
& , &
\displaystyle\frac{\partial}{\partial y}f(x,y)
\end{array}
$$

偏微分計算の例題

それでは例題で偏微分の計算をしてみましょう。

以下の関数の2階偏導関数まで求めます。

$$
f(x,y)
=
x^3+y^2+\sin(xy)
$$

まず1階偏導関数を求めます。$x$での偏微分と$y$での偏微分の2種類があります。

$$
\begin{align}
f_x(x,y)
&=
3x^2+y\cos(xy)
\\\\
f_y(x,y)
&=
2y+x\cos(xy)
\end{align}
$$

偏微分と関係ない方の変数は定数とみなして常微分計算すればOKです。

次に2階偏導関数を求めます。$f_x$の$x$での偏微分と$y$での偏微分の2種類、$f_y$の$x$での偏微分と$y$での偏微分の2種類で、計4種類あります。

$$
\begin{align}
f_{xx}(x,y)
&=
6x-y^2\sin(xy)
\\\\
f_{xy}(x,y)
&=
\cos(xy)-xy\sin(xy)
\\\\
f_{yx}(x,y)
&=
\cos(xy)-xy\sin(xy)
\\\\
f_{xx}(x,y)
&=
2-x^2\sin(xy)
\end{align}
$$

となります。

$f_{xy}$は$f_x$を$y$で偏微分した関数です。

$$
f_{xy}
=
(f_x)_y
=
\displaystyle\frac{\partial}{\partial y}f_x
$$

こんな感じのイメージです。

この例でも分かる通り偏微分の計算自体は常微分計算と同じです。気楽に計算しましょう。

シュワルツの定理

シュワルツの定理の概要

偏微分の順番を入れ替えてもOKかどうかを判断するシュワルツの定理という定理があります。

上記の例題でも

$$
f_{xy}=f_{yx}
$$

となっていたように、例題の$f(x,y)$は$x$と$y$のどちらから先に偏微分しても偏導関数は一致します。つまり偏微分の順番を勝手に入れ替えてもOKということです。

逆に言うと、偏微分の順番を入れ替えたらいけない関数もあります。これを判断するのがシュワルツの定理です。

シュワルツの定理の具体例

$f(x,y)$が$C^2$級の関数なら以下の式が成り立ちます。

$$
f_{xy}=f_{yx}
$$

$C^2$級は関数の滑らかさを表す表現方法です。

$f(x,y)$が$C^2$級であるためには、2階偏導関数$f_{xx},f_{xy},f_{yx},f_{yy}$が存在し、かつ2階偏導関数4つとも連続である必要があります。

$C^n$級の意味の詳細は解析関数のページをご覧ください。

$f(x,y)$が$C^3$級の関数なら以下の式が成り立ちます。

$$
\begin{align}
f_{xxy}=f_{xyx}=f_{yxx}
\\\\
f_{xyy}=f_{yxy}=f_{yyx}
\end{align}
$$

一般化すると「$f(x,y)$が$C^n$級の関数なら$n$階偏微分の順番を入れ替えてもOK」ということです。

まとめ

偏微分は多変数関数に含まれる変数のうちの1つ変数に注目して微分します。計算方法は常微分と同じです。

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