像空間と核空間の計算方法

こんにちはコーヤです。

このページでは線形写像の像空間と核空間の計算方法を勉強します。どちらも線形写像の性質を表す重要な空間です。

線形写像の意味

線形空間Vから拾ってきたテキトーな元を拾ってきて、別の線形空間Vに引っ越しさせるというのが線形写像fのイメージです。

線形写像fによってVからVに引っ越します、というのを式ではこう書きます。

f:VV

引っ越しの雰囲気を画像で見るとこんな感じです。

線形写像

線形写像の具体例

それでは具体例で線形写像の計算をしましょう。

引っ越し前の線形空間Vを2次元列ベクトルR2とします。座標はx,yです。

引っ越し先の線形空間Vも2次元列ベクトルR2とします。座標はx,yです。

引っ越し手続きの線形写像fは以下のようにします。

f=(0120)

この引っ越しは以下のように計算します。

(xy)=(0120)(xy)

例えばVの点(1,1)を引っ越しさせてみます。

(xy)=(0120)(11)=(12)

Vの点(1,1)からVの点(1,2)に引っ越しました。

点の線形写像

次にVの直線y=2x1を引っ越しさせてみます。

直線y=2x1上の点は任意定数tを用いて(t,2t1)と表せます。

(xy)=(0120)(t2t1)=(2t12t)

Vの点(t,2t1)からVの点(2t1,2t)に引っ越しました。点(2t1,2t)が作る直線はy=x+1です。

つまりVの直線y=2x1Vy=x+1に引っ越します。

線の線形写像

像空間と核空間の意味

それでは線形写像の像空間と核空間を見ていきます。

線形写像は引っ越しみたいなものでした。

線形写像

V全体をVに線形写像したらVの一部に固まったとき、そのVの一部が像空間Imfです。

像空間 Im

Vの一部を写像したらVの原点に固まったとき、そのVの一部が核空間Kerfです。

核空間 Ker

「一部」と書いたほうが雰囲気が伝わりやすいと思って書きましたが、正確には「部分空間」です。

ImfVの部分空間です。KerfVの部分空間です。

部分空間が不安な方は復習がてらご覧ください。

Imf計算の具体例

線形写像f:VVが以下のように定義されているとします。

(xy)=(2121)(xy)

V全体をVに写像したらVの一部に固まったとき、Vの一部がImfでした。

Vは全体を考えるのでx,yに制限はありません。自由な値が取れます。

Vは一部を考えるのでx,yに制限がつきます。この制限を求めるのがImf計算のゴールです。

Imf計算をするときは、最初にdim(Imf)を求めます。

Imfの重要な性質の1つに、Imfの次元は線形写像fの行列のランクと一致するという性質があります。

rank(2121)=1

これよりdim(Imf)=1となります。

次元が1ということはImfは直線です。また、直線ということは任意定数1個で表すことができます。

冒頭の例の点(2t1,2t)が作る直線はy=x+1になる、というのを逆に捉えます。

直線y=x+1は任意定数tの1個で表すことができています。

任意定数2個なら平面、3個なら空間となります。

以上よりImfは直線かつ任意定数1個という情報を得ました。

それでは線形写像fを方程式の形に変形して

x=2xyy=2x+y

です。x,yの制限を求めるのがゴールなのでx,yはいらない文字です。任意定数が1個使えることが分かっているので2xy=tとしてx,yをまとめると

x=ty=t

となります。この2式からx,y

y=x

の制限がかかることが分かります。

これよりImfy=xの直線です。

次元定理の意味

Kerf計算で使う次元定理は以下の公式です。

dimV=dim(Imf)+dim(Kerf)

今の例だとVx,yの2次元空間なのでdimV=2です。dim(Imf)は計算したとおりdim(Imf)=1です。

Kerfはまだ分かりませんが、次元定理よりdim(Kerf)=1であることがわかりました。

Kerfは1次元、つまり直線であるという情報を持った状態で計算に進みます。

Kerf計算の具体例

Imfの例と同じf:VVを考えます。

(xy)=(2121)(xy)

Vの一部を写像したらVの原点に固まったとき、Vの一部がKerfでした。

Vは一部を考えるのでx,yに制限がつきます。この制限を求めるのがKerf計算のゴールです。

Vは原点を考えるので(x,y)=(0,0)です。

線形写像の式に(x,y)=(0,0)を代入して

(00)=(2121)(xy)

これは同次連立1次方程式の形になっています。

この同次連立1次方程式から得られる式は

2xy=0

です。

Kerfは直線だと分かっているので、この式を直線だとわかるように変形して

y=2x

となります。

これよりKerfy=2xの直線です。

ImfKerfの検算

V全体をVに線形写像したらVの一部に固まったとき、そのVの一部がImfでした。

Vの一部を写像したらVの原点に固まったとき、そのVの一部がKerfでした。

計算が終わったので、線形写像の様子を確認してVVの引っ越しの様子を見てみましょう。

Imfの検算

Vから適当に点を選びます。今回は(1,0)(0,1)(1,0)(0,1)とします。

4点がどこに移されるかそれぞれ計算すると

(xy)=(2121)(10)=(22)

(xy)=(2121)(01)=(11)

(xy)=(2121)(10)=(22)

(xy)=(2121)(01)=(11)

像空間

たしかにy=xの直線上に移されていることが分かります。

Kerfの検算

y=2x上から適当に点を選びます。今回は(0,0)(1,2)(1,2)とします。

3点がどこに移されるかそれぞれ計算すると

(xy)=(2121)(00)=(00)

(xy)=(2121)(12)=(00)

(xy)=(2121)(12)=(00)

核空間

たしかにy=2xの直線上の点が(x,y)=(0,0)移されていることが分かります。

まとめ

線形空間Vから線形空間Vに対応させるのが線形写像fです。

V全体をVに写像したらVの一部に固まったとき、Vの一部がImfです。

Vの一部を写像したらVの原点に固まったとき、Vの一部がKerfです。

次元定理は以下の公式です。

dimV=dim(Imf)+dim(Kerf)

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