こんにちはコーヤです。
このページでは線形写像の像空間と核空間の計算方法を勉強します。どちらも線形写像の性質を表す重要な空間です。
線形写像の意味
線形空間から拾ってきたテキトーな元を拾ってきて、別の線形空間に引っ越しさせるというのが線形写像のイメージです。
線形写像によってからに引っ越します、というのを式ではこう書きます。
引っ越しの雰囲気を画像で見るとこんな感じです。
線形写像の具体例
それでは具体例で線形写像の計算をしましょう。
引っ越し前の線形空間を2次元列ベクトルとします。座標はです。
引っ越し先の線形空間も2次元列ベクトルとします。座標はです。
引っ越し手続きの線形写像は以下のようにします。
この引っ越しは以下のように計算します。
例えばの点を引っ越しさせてみます。
の点からの点に引っ越しました。
次にの直線を引っ越しさせてみます。
直線上の点は任意定数を用いてと表せます。
の点からの点に引っ越しました。点が作る直線はです。
つまりの直線はのに引っ越します。
像空間と核空間の意味
それでは線形写像の像空間と核空間を見ていきます。
線形写像は引っ越しみたいなものでした。
全体をに線形写像したらの一部に固まったとき、そのの一部が像空間です。
の一部を写像したらの原点に固まったとき、そのの一部が核空間です。
「一部」と書いたほうが雰囲気が伝わりやすいと思って書きましたが、正確には「部分空間」です。
はの部分空間です。はの部分空間です。
部分空間が不安な方は復習がてらご覧ください。
計算の具体例
線形写像が以下のように定義されているとします。
全体をに写像したらの一部に固まったとき、の一部がでした。
は全体を考えるのでに制限はありません。自由な値が取れます。
は一部を考えるのでに制限がつきます。この制限を求めるのが計算のゴールです。
計算をするときは、最初にを求めます。
の重要な性質の1つに、の次元は線形写像の行列のランクと一致するという性質があります。
これよりとなります。
次元が1ということはは直線です。また、直線ということは任意定数1個で表すことができます。
冒頭の例の点が作る直線はになる、というのを逆に捉えます。
直線は任意定数の1個で表すことができています。
任意定数2個なら平面、3個なら空間となります。
以上よりは直線かつ任意定数1個という情報を得ました。
それでは線形写像を方程式の形に変形して
です。の制限を求めるのがゴールなのではいらない文字です。任意定数が1個使えることが分かっているのでとしてをまとめると
となります。この2式からは
の制限がかかることが分かります。
これよりはの直線です。
次元定理の意味
計算で使う次元定理は以下の公式です。
今の例だとはの2次元空間なのでです。は計算したとおりです。
はまだ分かりませんが、次元定理よりであることがわかりました。
は1次元、つまり直線であるという情報を持った状態で計算に進みます。
計算の具体例
の例と同じを考えます。
の一部を写像したらの原点に固まったとき、の一部がでした。
は一部を考えるのでに制限がつきます。この制限を求めるのが計算のゴールです。
は原点を考えるのでです。
線形写像の式にを代入して
これは同次連立1次方程式の形になっています。
同次連立1次方程式や自由度が不安な方はご覧ください。
この同次連立1次方程式から得られる式は
です。
は直線だと分かっているので、この式を直線だとわかるように変形して
となります。
これよりはの直線です。
との検算
全体をに線形写像したらの一部に固まったとき、そのの一部がでした。
の一部を写像したらの原点に固まったとき、そのの一部がでした。
計算が終わったので、線形写像の様子を確認してとの引っ越しの様子を見てみましょう。
の検算
から適当に点を選びます。今回はとします。
4点がどこに移されるかそれぞれ計算すると
たしかにの直線上に移されていることが分かります。
の検算
上から適当に点を選びます。今回はとします。
3点がどこに移されるかそれぞれ計算すると
たしかにの直線上の点が移されていることが分かります。
まとめ
線形空間から線形空間に対応させるのが線形写像です。
全体をに写像したらの一部に固まったとき、の一部がです。
の一部を写像したらの原点に固まったとき、の一部がです。
次元定理は以下の公式です。
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