こんにちはコーヤです。
このページでは、関数の滑らかさを勉強します。微分とテイラー展開の知識を利用して、「滑らか」という直感的な形容詞を正確に定義します。
テイラー展開と滑らかさの関係
テイラー展開の公式は以下の式でした。
$$
f(x)
=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{1}{n!}
f^{(n)}(a)(x-a)^n
$$
この公式は$f(x)$が無限に微分できる関数であることが前提です。
不連続な関数やギザギザな関数は微分できないのでテイラー展開もできません。つまりテイラー展開するには無限に微分できるくらい滑らかな関数であることが必要条件です。
では無限に微分できる滑らかな関数は全てテイラー展開可能なのかと思いますが、そうではない関数もあります。例えば以下のような関数です。
$$
f(x)
=
\left\{
\begin{array}{ll}
e^{-\frac{1}{x}}
&
(x>0)
\\\\
0
&
(x\leq 0)
\end{array}
\right.
$$
この関数は無限に微分できるくらい滑らかだけど、テイラー展開するには滑らかさが足りないという状態です。
こういった滑らかさの状態を判別するために、微分とテイラー展開の知識を使って関数の滑らかさを定義しましょう。
滑らかさの定義
関数$f(x)$の滑らかさは以下の2つの条件を満たすかどうかで定義されています。
- $f(x)$は$n$階微分が可能
- $f^{(n)}(x)$が連続
$f(x)$がどちらの条件も満たすとき、「$f(x)$は$C^n$級の関数」と言います。
$C^{\infty}$級のうちテイラー展開が可能なものを$C^{\omega}$級と表し、$C^{\omega}$級の関数のことを「解析関数」と呼びます。
この分類を使って関数の滑らかさの順番は、粗い方から滑らかな方に向かって
$$
C^0 \to C^1 \to C^2 \to \cdots \to C^{\infty} \to C^{\omega}
$$
となります。
ではさっそく具体例を見ていきましょう。
$C^0$級の例
$$
f(x)
=
\left\{
\begin{array}{ll}
x^2\sin\displaystyle\frac{1}{x}
&
(x\neq 0)
\\\\
0
&
(x=0)
\end{array}
\right.
$$
この関数が$C^0$級かどうか調べます。
$C^0$級の条件は「$f(x)$は0階微分が可能」かつ「$f^{(0)}(x)$が連続」です。
言い換えると「$f(x)$は微分できなくても良い」かつ「$f(x)$が連続」です。
微分の条件は関係ないので$f(x)$が連続かどうかをだけを調べます。連続か怪しいのは$x=0$の部分なので$x\to 0$の極限を調べましょう。
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
f(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
x^2\sin\displaystyle\frac{1}{x}
$$
これを調べます。
$$
-1
\leq
\sin\displaystyle\frac{1}{x}
\leq
1
$$
より
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
-x^2
\leq
\displaystyle\lim_{x\to 0}
x^2\sin\displaystyle\frac{1}{x}
\leq
\displaystyle\lim_{x\to 0}
x^2
$$
となります。両サイドは
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
-x^2
=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
x^2
=
0
$$
なので
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
x^2\sin\displaystyle\frac{1}{x}
=
0
$$
です。つまり
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
f(x)
=
f(0)
$$
となるので$f(x)$は連続です。つまり「$f^{(0)}(x)$が連続」の条件を満たします。
これより$C^0$級の条件は満たします。
この関数はもっと滑らかで$C^1$級かもしれません。明確に$C^0$級だと判断するために$C^1$級ではないことも計算します。
$C^1$級の条件は「$f(x)$は1階微分が可能」かつ「$f^{(1)}(x)$が連続」です。
まず$x=0$での微分は
$$
\begin{align}
f'(0)
&=
\displaystyle\lim_{h\to 0}
\displaystyle\frac{f(0+h)-f(0)}{h}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{h\to 0}
\displaystyle\frac{f(h)-f(0)}{h}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{h\to 0}
\displaystyle\frac{h^2\sin\displaystyle\frac{1}{h}-0}{h}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{h\to 0}
h\sin\displaystyle\frac{1}{h}
\\\\&=
0
\end{align}
$$
次に$x\neq 0$での微分は
$$
f'(x)
=
2x\sin\displaystyle\frac{1}{x}-\cos\displaystyle\frac{1}{x}
$$
です。
以上より「$f(x)$は1階微分が可能」の条件は満たしました。次に「$f^{(1)}(x)$が連続」の条件を調べます。
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
f'(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left(
2x\sin\displaystyle\frac{1}{x}-\cos\displaystyle\frac{1}{x}
\right)
$$
これは振動するので
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
f'(x)
\neq
f'(0)
$$
となります。つまり$f'(x)$は不連続であるため「$f^{(1)}(x)$が連続」の条件は満たしません。
以上より$C^1$級でないことも計算できたので$C^0$級であると言えます。
$C^1$級の例
$$
f(x)
=
\left\{
\begin{array}{ll}
x^2
&
(x\geq 0)
\\\\
-x^2
&
(x<0)
\end{array}
\right.
$$
この関数が$C^0$級かどうか調べます。
$C^0$級の条件は「$f(x)$は0階微分が可能」かつ「$f^{(0)}(x)$が連続」です。
言い換えると「$f(x)$は微分できなくても良い」かつ「$f(x)$が連続」です。
微分の条件は関係ないので$f(x)$が連続かどうかをだけを調べます。連続か怪しいのは$x=0$の部分なので$x\to 0$の極限を調べましょう。
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to +0}
x^2
\\\\&=
0
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
-x^2
\\\\&=
0
\end{align}
$$
これより
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f(x)
$$
となるので$f(x)$は連続です。つまり「$f^{(0)}(x)$が連続」の条件を満たします。
これより$C^0$級の条件は満たします。
次に$C^1$級かどうか調べます。
$C^1$級の条件は「$f(x)$は1階微分が可能」かつ「$f^{(1)}(x)$が連続」です。
まず$x\geq 0$での微分は
$$
f'(x)=2x
$$
次に$x<0$での微分は
$$
f'(x)=-2x
$$
です。
以上より「$f(x)$は1階微分が可能」の条件は満たしました。次に「$f^{(1)}(x)$が連続」の条件を調べます。
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f'(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to +0}
2x
\\\\&=
0
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f'(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
-2x
\\\\&=
0
\end{align}
$$
これより
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f'(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f'(x)
$$
となるので$f'(x)$は連続です。つまり「$f^{(1)}(x)$が連続」の条件を満たします。
これより$C^1$級の条件は満たします。
この関数はもっと滑らかで$C^2$級かもしれません。明確に$C^1$級だと判断するために$C^2$級ではないことも計算します。
$C^2$級の条件は「$f(x)$は2階微分が可能」かつ「$f^{(2)}(x)$が連続」です。
まず$x\geq 0$での微分は
$$
f'{}'(x)=2
$$
次に$x<0$での微分は
$$
f'{}'(x)=-2
$$
です。
以上より「$f(x)$は2階微分が可能」の条件は満たしました。次に「$f^{(2)}(x)$が連続」の条件を調べます。
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f'{}'(x)=2
$$
$$
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f'{}'(x)=-2
$$
これより
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f'{}'(x)
\neq
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f'{}'(x)
$$
となります。つまり$f'{}'(x)$は不連続であるため「$f^{(2)}(x)$が連続」の条件は満たしません。
以上より$C^2$級でないことも計算できたので$C^1$級であると言えます。
$C^{\infty}$級の例
$$
f(x)
=
\left\{
\begin{array}{ll}
e^{-\frac{1}{x}}
&
(x>0)
\\\\
0
&
(x\leq 0)
\end{array}
\right.
$$
この関数が$C^0$級かどうか調べます。
$C^0$級の条件は「$f(x)$は0階微分が可能」かつ「$f^{(0)}(x)$が連続」です。
言い換えると「$f(x)$は微分できなくても良い」かつ「$f(x)$が連続」です。
微分の条件は関係ないので$f(x)$が連続かどうかをだけを調べます。連続か怪しいのは$x=0$の部分なので$x\to 0$の極限を調べましょう。
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to +0}
e^{-\frac{1}{x}}
\\\\&=
0
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
0
\\\\&=
0
\end{align}
$$
これより
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f(x)
$$
となるので$f(x)$は連続です。つまり「$f^{(0)}(x)$が連続」の条件を満たします。
これより$C^0$級の条件は満たします。
次に$C^n$級かどうか調べます。
$C^n$級の条件は「$f(x)$は$n$階微分が可能」かつ「$f^{(n)}(x)$が連続」です。
まず$x>0$での微分は
$$
\begin{align}
f^{(1)}(x)
&=
e^{-\frac{1}{x}}\cdot\displaystyle\frac{1}{x^2}
\\\\
f^{(2)}(x)
&=
-e^{-\frac{1}{x}}\cdot\displaystyle\frac{2x-1}{x^4}
\\\\
f^{(3)}(x)
&=
e^{-\frac{1}{x}}\cdot\displaystyle\frac{6x^2-6x+1}{x^6}
\\\\
f^{(4)}(x)
&=
-e^{-\frac{1}{x}}\cdot\displaystyle\frac{24x^3-36x^2+12x-1}{x^8}
\\\\
\vdots
\end{align}
$$
(本当に$n$階微分が可能なことを証明するのはかなり大変なのでここでは割愛します。$n$階微分できそうな雰囲気だけ感じとってください。)
次に$x<0$での微分は
$$
\begin{align}
f^{(1)}(x)
&=
0
\\\\
f^{(2)}(x)
&=
0
\\\\
f^{(3)}(x)
&=
0
\\\\
\vdots
\end{align}
$$
です。
以上より「$f(x)$は$n$階微分が可能」の条件は満たしました。
次に「$f^{(n)}(x)$が連続」の条件を調べます。
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f^{(n)}(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to +0}
e^{-\frac{1}{x}}O(x^{-n-1})
\\\\&=
0
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f^{(n)}(x)
&=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
0
\\\\&=
0
\end{align}
$$
これより
$$
\displaystyle\lim_{x\to +0}
f'(x)
=
\displaystyle\lim_{x\to -0}
f'(x)
$$
となるので$f^{(n)}(x)$は連続です。つまり「$f^{(n)}(x)$が連続」の条件を満たします。
これより$C^n$級の条件は満たします。
途中で出てきた$O(x^{-n-1})$はランダウの記号です。記号の意味をご存知ない方はランダウの記号のページをご覧ください。
$n\to\infty$としても$C^n$級の条件は満たし続けるので$C^{\infty}$級となります。
この関数はもっと滑らかで$C^{\omega}$級かもしれません。明確に$C^{\infty}$級だと判断するために$C^{\omega}$級ではないことも計算します。
$C^{\omega}$級の条件は「$f(x)$がテイラー展開可能」です。
今回は$x=0$でのテイラー展開、つまりマクローリン展開が可能かどうかを調べます。
マクローリン展開の公式は以下の式です。
$$
f(x)
=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{1}{n!}
f^{(n)}(0)x^n
$$
$x=0$での$n$次導関数の値を求めると
$$
\begin{align}
f(0)&=0
\\\\
f^{(1)}(0)&=0
\\\\
f^{(2)}(0)&=0
\\\\
f^{(3)}(0)&=0
\\\\
\vdots
\end{align}
$$
となるのでマクローリン展開は
$$
\begin{align}
f(x)
&=
0+0x+0x^2+0x^3+\cdots
\\\\&=
0
\end{align}
$$
です。この無限級数は$x$が定数の範囲内なら収束するので、収束半径は$x\in\mathbb{R}$です。
例えば$x=5$のとき、元の関数を使うと
$$
f(5)
=
e^{-\frac{1}{5}}
$$
となりますが、マクローリン展開を使うと
$$
\begin{align}
f(5)
&=
0+0\cdot 5+0\cdot 5^2+0\cdot 5^3+\cdots
\\\\&=
0
\end{align}
$$
となります。
このように元の関数と収束半径内のマクローリン展開が一致しません。
これより「$f(x)$がテイラー展開可能」の条件は満たしません。
以上より$C^{\omega}$級でないことも計算できたので$C^{\infty}$級であると言えます。
$C^{\omega}$級の例
以下のようにテイラー展開(マクローリン展開)が可能な関数は全て$C^{\omega}$級です。
$$
\begin{align}
e^x
&=
1+x+\displaystyle\frac{1}{2}x^2+\displaystyle\frac{1}{6}x^3+\cdots
\\\\&=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{1}{n!}
x^n
~~~~(-\infty<x<\infty)
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\log(1+x)
&=
x-\displaystyle\frac{1}{2}x^2+\displaystyle\frac{1}{3}x^3-\displaystyle\frac{1}{4}x^4+\cdots
\\\\&=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{(-1)^n}{n+1}
x^{n+1}
~~~~(-1<x\leq 1)
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\sin x
&=
x-\displaystyle\frac{1}{6}x^3+\displaystyle\frac{1}{120}x^5-\displaystyle\frac{1}{5040}x^7+\cdots
\\\\&=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{(-1)^n}{(2n+1)!}
x^{2n+1}
~~~~(-\infty<x<\infty)
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\cos x
&=
1-\displaystyle\frac{1}{2}x^2+\displaystyle\frac{1}{24}x^4-\displaystyle\frac{1}{720}x^6+\cdots
\\\\&=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
\displaystyle\frac{(-1)^n}{(2n)!}
x^{2n}
~~~~(-\infty<x<\infty)
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
\displaystyle\frac{1}{1-x}
&=
1+x^2+x^3+x^4+\cdots
\\\\&=
\displaystyle\sum_{n=0}^\infty
x^n
~~~~(-1<x<1)
\end{align}
$$
多変数関数の滑らかさ
ここまで1変数関数の滑らかさについて勉強してきましたが、多変数関数の滑らかさも同様に定義できます。
2変数関数$f(x,y)$が$C^1$級になる条件は以下の4つが全て満たされていることです。
- $x$で1階偏微分が可能
- $f_x(x,y)$が連続
- $y$で1階偏微分が可能
- $f_y(x,y)$が連続
2変数関数$f(x,y)$が$C^2$級になる条件は以下の8つが全て満たされていることです。
- $x$で2階偏微分が可能
- $f_{xx}(x,y)$が連続
- $x$で1階偏微分後、$y$で1階偏微分が可能
- $f_{xy}(x,y)$が連続
- $y$で1階偏微分後、$x$で1階偏微分が可能
- $f_{yx}(x,y)$が連続
- $y$で2階偏微分が可能
- $f_{yy}(x,y)$が連続
こんな感じで、多変数関数に対しても滑らかさの定義を拡張できます。
まとめ
関数$f(x)$の滑らかさは以下の2つの条件を満たすかどうかで定義されています。
- $f(x)$は$n$階微分が可能
- $f^{(n)}(x)$が連続
$f(x)$がどちらの条件も満たすとき、「$f(x)$は$C^n$級の関数」と言います。
$C^{\infty}$級のうちテイラー展開が可能なものを$C^{\omega}$級と表し、$C^{\omega}$級の関数のことを「解析関数」と呼びます。
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