こんにちはコーヤです。
このページでは3次の行列の対角化とジョルダン標準形の計算を全パターン勉強します。
3次の対角化とジョルダン標準形の分類
3次の行列の対角化計算は以下の6パターンに分類することができます。

対角化の4ステップを再掲します。
- 固有値と固有ベクトルを求める
- 対角化可能か判定する
- 変換行列
を作る - 逆行列
を計算する
全てのパターンを計算できるよう勉強していきましょう。
パターン1
以下の行列Aを対角化します。
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
3次の行列
対角行列
となります。
Step3. 変換行列 を作る
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
パターン2
以下の行列Aを対角化します。
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
3次の行列
固有ベクトルの式は2個しか得られませんでしたが、任意定数
今回の例だと
対角行列
となります。
Step3. 変換行列 を作る
変換行列
- 1列目は
の の場合の固有ベクトル - 2列目は
の の場合の固有ベクトル - 3列目は
の の場合の固有ベクトル
以上のように任意定数を設定して
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
パターン3
残念ながらパターン3は存在しません。
存在しないことは簡単に確認できるので確認してみましょう。
行列
パターン3の対角行列
これを対角化の式
両辺に左側から
両辺に右側から
これより
対角化する前の行列
パターン4
以下の行列Aを対角化します。
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
3次の行列
よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。
ジョルダン標準形
となります。
Step3. 変換行列 を作る
広義固有ベクトル
この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。
これは自由度1なので任意定数1個で
任意定数を
となります。
それでは変換行列
- 1列目は
の の場合の固有ベクトル - 2列目は
の の場合の固有ベクトル - 3列目は
の の場合の広義固有ベクトル
2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。
以上のように任意定数を設定して
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
パターン5
以下の行列Aを対角化します。
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
3次の行列
よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。
ジョルダン標準形
となります。
Step3. 変換行列 を作る
広義固有ベクトル
この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。
これを階段行列に変形すると
広義固有ベクトルが存在するためにはこの非同次連立1次方程式が解を持たなければいけません。
つまり
この条件を満たさないと係数行列と拡大係数行列のランクが合わずに解なしとなってしまいます。
この条件式2つを満たすように
とします。これを満たすような固有ベクトルを用いることで広義固有ベクトルが存在するようになります。
拡大係数行列にこの条件を代入して書き直すと
これは自由度2なので任意定数2個で
任意定数を
となります。
それでは変換行列
ジョルダン鎖の条件を満たすように任意定数の値を設定します。
広義固有ベクトルが存在するために固有ベクトルが満たすべき条件、という流れで非同次連立1次方程式を解きました。つまり
今回は
変換行列
固有ベクトルと広義固有ベクトルの間の鎖なので、2列目と3列目の鎖となります。なので2列目の固有ベクトルを
逆に1列目は
これらの条件を満たすように
- 1列目は
の の場合の固有ベクトル - 2列目は
の の場合の固有ベクトル - 3列目は
の の場合の広義固有ベクトル
2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。
以上のように任意定数を設定して
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
パターン6
以下の行列Aを対角化します。
Step1. 固有値と固有ベクトルを求める
行列
これより固有値、固有ベクトルは
です。
Step2. 対角化可能か判定する
3次の行列
よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。
ジョルダン標準形
となります。
Step3. 変換行列 を作る
広義固有ベクトル
この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。
これを階段行列に変形すると
これは自由度1なので任意定数1個で
任意定数を
となります。
現時点で固有ベクトル1個、広義固有ベクトル1個の計2個なので対角化計算のためにはもう1個広義固有ベクトルが必要です。
広義固有ベクトル
この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。
これを階段行列に変形すると
これは自由度1なので任意定数1個で
任意定数を
となります。
それでは変換行列
- 1列目は
の の場合の固有ベクトル - 2列目は
の の場合の広義固有ベクトル - 3列目は
の の場合の広義固有ベクトル
1列目と2列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。
2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。
以上のように任意定数を設定して
とします。
Step4. 逆行列 を計算する
となります。
最終的に対角化の式
となり対角化完了です。
まとめ
3次の対角化、ジョルダン標準形は6パターンのどれかに分類できます。

コメント欄