対角化とジョルダン標準形の全パターン

こんにちはコーヤです。

このページでは3次の行列の対角化とジョルダン標準形の計算を全パターン勉強します。

3次の対角化とジョルダン標準形の分類

3次の行列の対角化計算は以下の6パターンに分類することができます。

対角化とジョルダン標準形の分類

対角化の4ステップを再掲します。

  1. 固有値と固有ベクトルを求める
  2. 対角化可能か判定する
  3. 変換行列Pを作る
  4. 逆行列P1を計算する

全てのパターンを計算できるよう勉強していきましょう。

パターン1

以下の行列Aを対角化します。

A=(120121001)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Aの固有方程式は

det(AλE)=|1λ2012λ1001λ|=(λ+1)λ(λ1)

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=1λ2=0λ3=1

v1=k1(110)v2=k2(210)v3=k3(101)

です。

Step2. 対角化可能か判定する

3次の行列Aに対し線形独立な固有ベクトルがv1,v2,v3の3個あるので、対角化可能です。

対角行列D

D=(λ1000λ2000λ3)=(100000001)

となります。

Step3. 変換行列Pを作る

k1=k2=k3=1として

P=(121110001)

とします。

Step4. 逆行列P1を計算する

Pの逆行列を計算すると

P1=(121111001)

となります。

最終的に対角化の式P1AP=Dに代入して

(121111001)(120121001)(121110001)=(100000001)

となり対角化完了です。

パターン2

以下の行列Aを対角化します。

A=(122212223)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Aの固有方程式は

det(AλE)=|1λ2221λ2223λ|=(λ+1)2(λ1)

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=1λ2=1

v1=k11(101)+k12(011)v2=k2(111)

です。

Step2. 対角化可能か判定する

3次の行列Aに対し固有ベクトルがv1,v2の2個しかありませんので対角化不可能かと思いますが、ここで注意ポイントです。

n次の行列を対角化する条件はn個の「線形独立な」固有ベクトルがあることです。

固有ベクトルの式は2個しか得られませんでしたが、任意定数k11,k12,k2の値を調整して線形独立な固有ベクトルが3個になればOKです。

今回の例だとv1のうちk11=1,k12=0のときとk11=0,k12=1のときで線形独立な固有ベクトルが2個得られます。v2も合わせて線形独立な固有ベクトルが3個になるので、対角化可能です。

対角行列D

D=(λ1000λ1000λ2)=(100010001)

となります。

Step3. 変換行列Pを作る

変換行列Pは線形独立な固有ベクトルを並べて作ったものです。

  • 1列目はv1k11=1,k12=0の場合の固有ベクトル
  • 2列目はv1k11=0,k12=1の場合の固有ベクトル
  • 3列目はv2k2=1の場合の固有ベクトル

以上のように任意定数を設定して

P=(101011111)

とします。

Step4. 逆行列P1を計算する

Pの逆行列を計算すると

P1=(011101111)

となります。

最終的に対角化の式P1AP=Dに代入して

(011101111)(122212223)(101011111)=(100010001)

となり対角化完了です。

パターン3

残念ながらパターン3は存在しません。

存在しないことは簡単に確認できるので確認してみましょう。

行列Aを対角化してパターン3になると仮定します。

パターン3の対角行列Dは以下のように変形できます。

D=(λ1000λ1000λ1)=λ1E

これを対角化の式P1AP=Dに代入して

P1AP=λ1E

両辺に左側からPをかけて

AP=Pλ1E=λ1P

両辺に右側からP1をかけて

A=λ1PP1=λ1E=D

これよりA=Dであればパターン3になることが分かります。

対角化する前の行列AA=Dということは既に対角行列になっています。対角行列を対角化計算する必要はありませんので、パターン3は存在しないということになります。

パターン4

以下の行列Aを対角化します。

A=(101121110)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Aの固有方程式は

det(AλE)=|1λ0112λ111λ|=(λ+1)λ2

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=1λ2=0

v1=k1(132)v2=k2(111)

です。

Step2. 対角化可能か判定する

3次の行列Aに対し固有ベクトルがv1,v2の2個しかありません。任意定数の値を調整しても、線形独立な固有ベクトルは2個しか得られません。

よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。

ジョルダン標準形J

J=(λ1000λ2100λ2)=(100001000)

となります。

Step3. 変換行列Pを作る

広義固有ベクトルv2は以下のジョルダン鎖の条件を満たします。

(AλE)v2=v2

この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。

(101k2121k2110k2)

これは自由度1なので任意定数1個でv2を表現できます。

任意定数をk2として

v2=k2(100)+k2(111)

となります。

それでは変換行列Pを作ります。

  • 1列目はv1k1=1の場合の固有ベクトル
  • 2列目はv2k2=1の場合の固有ベクトル
  • 3列目はv2k2=1,k2=0の場合の広義固有ベクトル

2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。

以上のように任意定数を設定して

P=(111310210)

とします。

Step4. 逆行列P1を計算する

Pの逆行列を計算すると

P1=(011023112)

となります。

最終的に対角化の式P1AP=Jに代入して

(011023112)(101121110)(111310210)=(100001000)

となり対角化完了です。

パターン5

以下の行列Aを対角化します。

A=(331111264)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Aの固有方程式は

det(AλE)=|3λ3111λ1264λ|=(λ2)3

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=2

v1=k11(310)+k12(101)

です。

Step2. 対角化可能か判定する

3次の行列Aに対し固有ベクトルがv1の1個しかありません。任意定数の値を調整しても、線形独立な固有ベクトルは2個しか得られません。

よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。

ジョルダン標準形J

J=(λ1000λ1100λ1)=(200021002)

となります。

Step3. 変換行列Pを作る

広義固有ベクトルv1は以下のジョルダン鎖の条件を満たします。

(AλE)v1=v1

この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。

(1313k11+k12131k11262k12)

これを階段行列に変形すると

(1313k11+k120002k11+k120006k113k12)

広義固有ベクトルが存在するためにはこの非同次連立1次方程式が解を持たなければいけません。

つまり

{2k11+k12=06k113k12=0

この条件を満たさないと係数行列と拡大係数行列のランクが合わずに解なしとなってしまいます。

この条件式2つを満たすように

k12=2k11

とします。これを満たすような固有ベクトルを用いることで広義固有ベクトルが存在するようになります。

拡大係数行列にこの条件を代入して書き直すと

(1313k11+k1200000000)

これは自由度2なので任意定数2個でv1を表現できます。

任意定数をk11,k12として

v1=k11(300)+k12(100)+k11(310)+k12(101)

となります。

それでは変換行列Pを作ります。

ジョルダン鎖の条件を満たすように任意定数の値を設定します。

広義固有ベクトルが存在するために固有ベクトルが満たすべき条件、という流れで非同次連立1次方程式を解きました。つまりk12=2k11を満たすべきは広義固有ベクトルではなく固有ベクトルです。

今回はk11=1,k12=2として固有ベクトルを作ります。

変換行列Pを1列目と2列目が固有ベクトル、3列目が広義固有ベクトルの形で作るとします。

固有ベクトルと広義固有ベクトルの間の鎖なので、2列目と3列目の鎖となります。なので2列目の固有ベクトルをk11=1,k12=2とします。

逆に1列目はk12=2k11を満たしてはいけません。変換行列Pは線形独立なベクトルを並べたものなので、2列目と線形独立になるように1列目の固有ベクトルを決めます。

これらの条件を満たすように

  • 1列目はv1k11=0,k12=1の場合の固有ベクトル
  • 2列目はv1k11=1,k12=2の場合の固有ベクトル
  • 3列目はv1k11=1,k12=2,k11=0,k12=0の場合の広義固有ベクトル

2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。

以上のように任意定数を設定して

P=(111010120)

とします。

Step4. 逆行列P1を計算する

Pの逆行列を計算すると

P1=(021010131)

となります。

最終的に対角化の式P1AP=Jに代入して

(021010131)(331111264)(111010120)=(200021002)

となり対角化完了です。

パターン6

以下の行列Aを対角化します。

A=(211132011)

Step1. 固有値と固有ベクトルを求める

行列Aの固有方程式は

det(AλE)=|2λ1113λ2011λ|=(λ+2)3

これより固有値、固有ベクトルは

λ1=2

v1=k1(111)

です。

Step2. 対角化可能か判定する

3次の行列Aに対し固有ベクトルがv1の1個しかありません。任意定数の値を調整しても、線形独立な固有ベクトルは1個しか得られません。

よって対角化不可能のためジョルダン標準形を目指します。

ジョルダン標準形J

J=(λ1100λ1100λ1)=(210021002)

となります。

Step3. 変換行列Pを作る

広義固有ベクトルv1は以下のジョルダン鎖の条件を満たします。

(AλE)v1=v1

この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。

(011k1112k1011k1)

これを階段行列に変形すると

(1010011k10000)

これは自由度1なので任意定数1個でv1を表現できます。

任意定数をk1として

v1=k1(010)+k1(111)

となります。

現時点で固有ベクトル1個、広義固有ベクトル1個の計2個なので対角化計算のためにはもう1個広義固有ベクトルが必要です。

広義固有ベクトルv1は以下のジョルダン鎖の条件を満たします。

(AλE)v1=v1

この非同次連立1次方程式の拡大係数行列は以下のようになります。

(011k1112k1+k1011k1)

これを階段行列に変形すると

(101k1011k10000)

これは自由度1なので任意定数1個でv1を表現できます。

任意定数をk1として

v1=k1(100)+k1(010)+k1(111)

となります。

それでは変換行列Pを作ります。

  • 1列目はv1k1=1の場合の固有ベクトル
  • 2列目はv1k1=1,k1=0の場合の広義固有ベクトル
  • 3列目はv1k1=1,k1=0,k1=0の場合の広義固有ベクトル

1列目と2列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。

2列目と3列目は鎖でつながっているので、共通している任意定数は同じ値を使わないといけません。

以上のように任意定数を設定して

P=(101110100)

とします。

Step4. 逆行列P1を計算する

Pの逆行列を計算すると

P1=(001011101)

となります。

最終的に対角化の式P1AP=Jに代入して

(001011101)(211132011)(101110100)=(210021002)

となり対角化完了です。

まとめ

3次の対角化、ジョルダン標準形は6パターンのどれかに分類できます。

対角化とジョルダン標準形の分類

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