ロピタルの定理の使い方

こんにちはコーヤです。

このページでは、ロピタルの定理の使用条件3つと使い方を勉強します。ロピタルは使用条件を満たしていることの確認が大変ですが、正攻法では解けない極限も計算できるようになります。

ロピタルの定理の概要

ロピタルの定理は関数の極限を計算するときに便利な定理で、以下の式が成り立ちます。

limxpf(x)g(x)=limxpf(x)g(x)

このように分母分子を微分しても極限の値が一致します。

もとの形では計算できなくても、微分すれば簡単に計算できる形になることがよくあります。

ロピタルの定理の威力

正攻法で関数の極限を求めるときは式変形に頭を使わないといけませんが、ロピタルの定理なら瞬殺できます。

この極限を例にしてロピタルの定理の威力を味わいましょう。

limx14πsinxcosx4xπ

この極限を正攻法で求めるには三角関数の合成に気付かなければいけません。

ロピタルの定理を使えば、分母分子を微分するだけで求まります。

limx14πsinxcosx4xπ=limx14πcosx+sinx4=12+124=24

計算は楽になり、式変形に頭も使いません。これがロピタルの定理の威力です。

ロピタルの定理の注意ポイント

威力を知ってしまうと全ての極限計算をロピタルの定理で処理しようと思うようになりますが、ロピタルの定理が使えない関数もあります。

また例を挙げます。正攻法とロピタルの定理の両方で解いてみます。

limx0x2+x+2x2+1

まずは正攻法で解きます。単純にx=0を代入すれば解けます。

limx0x2+x+2x2+1=2

これをロピタルの定理で解いてみます。

limx0x2+x+2x2+1=limx02x+12x=10=

正攻法で解いたときと答えが異なります。

このようにロピタルの定理が使えない関数なのに気付かずにロピタルの定理を使ってしまうと、間違った答えが出てきてしまいます。

ロピタルの定理の使用条件3つ

ロピタルの定理が使えるかどうかのチェックポイントは3つあります。

  1. 不定形であること
  2. 極限付近でg(x)0であること
  3. 微分後の極限が存在すること

それぞれ条件を見ていきましょう。

条件1. 不定形であること

まずは不定形であることを確かめないといけません。

limxpf(x)g(x)=00

limxpf(x)g(x)=±±

このどちらかの形になっていないといけません。

冒頭の例は

limx0x2+x+2x2+1=21

このように不定形ではないのでロピタルの定理が使えません。

条件2. 極限付近でg(x)0であること

求めたい極限がxaのようにある実数aに近づく場合と、xのように発散する場合で、極限付近の扱い方が異なります。

xaの極限の場合、極限付近はi1<a<i2となる実数i1,i2を用いて、以下の画像で示す区間を極限付近の区間Iとして扱います。

xの極限の場合、ある実数mを用いて、以下の画像で示す区間を極限付近の区間Mとして扱います。

i1,i2,mの値は自分の都合のいいように値を選んで大丈夫です。

逆に、どんな選び方をしてもg(x)0となる極限付近の区間が設定できない場合、ロピタルの定理は使えません。

g(x)=cosxの極限を例に区間を設定してみましょう。極限はx0xの2つの場合を考えます。

limx0f(x)cosx,limxf(x)cosx

下の図はg(x)=sinx=0となる点に黒丸をつけています。

x0の極限の場合、図に示したようにi1i2を設定すれば極限付近の区間Ig(x)=0となる点が存在しなくなります。

xの極限の場合、mの値をどこに設定しても区間Mg(x)=0となる点が現れます。

これより、g(x)=cosxかつxの極限はロピタルの定理が使えないということになります。

xの極限では区間M=(,m)となります。

xのときはx=tとしてtに変形したほうが分かりやすいかもしれません。

条件3. 微分後の極限が存在すること

ロピタルの定理の右辺、つまり微分した後の極限が存在しない場合はロピタルの定理は使えません。

limxf(x)g(x)=limxsinx

例えば微分した計算結果がsinxになった場合の極限は振動です。振動の場合は極限なしなので、ロピタルの定理は使えません。

ロピタルの定理が使えるのは収束する場合、発散する場合です。

ロピタルの定理が使えないのは振動する場合、右側極限と左側極限が異なる場合です。

ロピタルの定理の例題

それでは例題5つでロピタルの定理を使う練習をしましょう。

例題1

limx0x1+x+1x

条件1の「不定形であること」を調べます。

limx0x1+x+1x=02

不定形ではないのでロピタルの定理は使えません。

単純に代入するだけで答えが求まります。

limx0x1+x+1x=0

例題2

limxx(2x+sin2x)esinx

条件1の「不定形であること」を調べます。

分子はです。分母は不定形か怪しいので「はさみうち」で調べます。

1eesinxe

1sin2x1

この2式より

(2x1)1e(2x+sin2x)esinx(2x+1)e

両サイドはどちらも

limx(2x1)1e=limx(2x+1)e=

となるので

limxx(2x+sin2x)esinx=

と不定形になります。

条件2の「極限付近でg(x)0であること」を調べます。

g(x)=(2x+sin2x)esinx

より

g(x)=(2+2cos2x)esinx+(2x+sin2x)esinxcosx=(2+4cos2x2)esinx+(2x+sin2x)esinxcosx=4cos2xesinx+(2x+sin2x)esinxcosx=esinxcosx(4cosx+2x+sin2x)

分母にcosxがあります。したがって極限付近の区間(m,)において、mの値をどこに設定してもmより大きい場所でg(x)=0となる点は周期的に現れます。

これよりロピタルの定理は使えません。

代わりに正攻法で解きます。

limxx(2x+sin2x)esinx=limxx2x+sin2x1esinx

この2つに分解して考えます。まずは左側から

limxx2x+1limxx2x+sin2xlimxx2x1

この「はさみうち」より

limxx2x+sin2x=12

となります。

次に右側です。

limx1esinx

これは振動です。

以上の結果より

limxx(2x+sin2x)esinx

は振動です。極限なしとなります。

例題3

limxxcosxx

条件1の「不定形であること」を調べます。

cosxが振動しているので「はさみうち」で処理しましょう。

limxx1xlimxxcosxxlimxx+1x

両サイドはどちらも

limxx1x=limxx+1x=

となるので

limxxcosxx=

です。

条件2の「極限付近でg(x)0であること」を調べます。

g(x)=x

より

g(x)=1

です。

したがって極限付近の区間(m,)において、mの値をどんな値に設定してもg(x)=0となる点は現れません。

条件3の「微分後の極限が存在すること」を調べます。

limx1sinx1=limx1sinx

これは振動です。極限なしとなります。

微分後の極限が存在しないため、ロピタルの定理は使えません。

代わりに正攻法で解きます。分母分子をxで割って

limxxcosxx=limx1cosxx1

さらに「はさみうち」を用いて

limx1xlimxcosxxlimx1x

両サイドを計算して

0limxcosxx0

以上より

limx1cosxx1=1

です。

例題4

limx0tanh(arcsinx)x

この形のままロピタルの定理が使えるかどうか調べるのは面倒なので、慣れ親しんだ関数へ変形してからにしましょう。

arcsinx=tとおいてtの極限に変形します。

limx0tanh(arcsinx)x=limt0tanhtsint=limt0etet(et+et)sint=limt0e2t1(e2t+1)sint

この形でロピタルの定理が使えるか調べていきます。

条件1の「不定形であること」を調べます。

limt0e2t1(e2t+1)sint=00

不定形です。

条件2の「極限付近でg(x)0であること」を調べます。

g(t)=(e2t+1)sint

より

g(t)=2e2tsint+(e2t+1)cost=5e4t+2e2t+1sin(t+arctane2t+12e2t)

この式変形は三角関数の合成を使いました。

g(t)のグラフを書くのは無理そうですが、今はt 0の付近でg(t)0であること調べればいいだけです。

t=0を代入して

g(0)=8sin(arctan1)=22sin14π=2

となります。t=0g(t)0であることは分かりました。

極限付近の区間の設定ですが、グラフが書けないのでテキトーにi1=0.00001,i2=0.00001みたいな感じで設定します。

こうすればt0のとき、区間(i1,0)(0,i2)g(t)=0となる点が存在しなくなります。

条件3の「微分後の極限が存在すること」を調べます。

limt02e2t5e4t+2e2t+1sin(t+arctane2t+12e2t)=22=1

微分後の極限が存在します。

使用条件3つをクリアしたので、ロピタルの定理が使えることが分かりました。

微分後の極限は既に条件3で求めているので、もとの極限も

limt0e2t1(e2t+1)sint=1

となります。したがって式変形する前の極限も

limx0tanh(arcsinx)x=1

となります。

関数の極限のページでは同じ問題を正攻法で解いていますので、計算過程を見比べてみてください。

ロピタルの定理は一見便利なように思えますが、正攻法で解ける問題は正攻法で解いた方がよっぽど楽です。

 例題5

limx0(sinxx)1x2

ロピタルの定理を使うために分数の形に分解します。

limx0(sinxx)1x2=limx0sin1x2xx1x2

ロピタルの定理が使えるかを調べるのはちょっと面倒な形です。

ゴリ押しで調べてもOKですが、正攻法で式変形して単純な形にならないか試してみましょう。

1+t=sinxxとしてt0の極限に変形します。

limx0(sinxx)1x2=limt0(1+t)1x2=limt0{(1+t)1t}tx2=limt0etx2

ここでtx2について詳しく見ていきます。

limt0tx2=limx0sinxx1x2=limx0sinxxx3

ロピタルの定理が使えそうな形がでてきました。

条件1の「不定形であること」を調べます。

limx0sinxxx3=00

不定形です。

条件2の「極限付近でg(x)0であること」を調べます。

g(x)=x3

より

g(x)=3x2

g(x)=0になるのはx=0のときだけです。

これよりi1,i2i1<0<i2を満たすテキトーな値に設定します。

こうすればx0のとき、区間(i1,0)(0,i2)g(x)=0となる点が存在しなくなります。

条件3の「微分後の極限が存在すること」を調べます。

limx0cosx13x2=1cosxx213=1213=16

微分後の極限が存在します。

使用条件3つをクリアしたので、ロピタルの定理が使えることが分かりました。

微分後の極限は既に条件3で求めているので、もとの極限も

limx0sinxxx3=16

となります。この結果を代入して

limx0(sinxx)1x2=limt0etx2=e16

となります。

まとめ

ロピタルの定理が使えるかどうかのチェックポイントは3つあります。

  1. 不定形であること
  2. 極限付近でg(x)0であること
  3. 微分後の極限が存在すること

これらを満たした場合、以下のロピタルの定理が成り立ちます。

limxpf(x)g(x)=limxpf(x)g(x)

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