線形空間の基底と次元

こんにちはコーヤです。

このページでは線形空間を生成する基底とその次元について勉強します。基底と次元は今後出てくる様々な空間で必要になる知識です。

基底の雰囲気

空間を表現する素材みたいなもののことを基底といいます。

例えば私たちが住んでいる世界は縦、横、高さの3つが基底です。これをもっと数学っぽく表現してみましょう。

線形空間Vの一種である3次元列ベクトル空間R3というのが私たちが住んでいる世界が分類される空間です。R3では以下のe1,e2,e3が縦、横、高さに対応する基底となります。

e1=(100)e2=(010)e3=(001)

R3の基底で最も分かりやすいのがe1,e2,e3ですが、基底はこれだけではありません。

f1=(132)f2=(243)f3=(325)

f1,f2,f3R3の基底になります。

線形空間の基底の条件2つ

3次元列ベクトル空間R3の基底としてe1,e2,e3f1,f2,f3を挙げました。

これ以外にもR3の基底は無限にあります。基底は以下の2つの条件を満たせばどんな定め方をしてもOKです。

  • 線形独立であること
  • 線形結合で任意の元を表せること

この2つの条件がどういう意味なのか、詳しく見ていきましょう。

線形独立と線形従属の判定方法

まずは線形独立と線形従属の判定から始めます。

判定のときに使われるのが線形関係式です。線形空間Vの元a1,a2anと実数c1,c2cnによって作られる以下の式を線形関係式といいます。

c1a1+c2a2++cnan=0

c1,c2cnを好きなように調整して線形関係式を成り立たせます。

このときc1,c2cnが全て0のときしか成り立たないならa1,a2anは線形独立です。

c1,c2cnのうち1つでも0ではないのに成り立ったならa1,a2anは線形従属です。

線形関係式を解くときに同次連立1次方程式が出てきます。自由度が0かどうかで線形独立と線形従属を判断するので、自由度が不安な方は同次連立1次方程式のページをご覧ください。

線形独立の具体例

e1,e2,e3f1,f2,f3は線形独立です。確認してみましょう。

具体例1

e1=(100)e2=(010)e3=(001)

e1,e2,e3の線形関係式は

c1e1+c2e2+c3e3=0

これを行列形式に変形して

(e1e2e3)(c1c2c3)=(000)

e1,e2,e3を成分表示にして

(100010001)(c1c2c3)=(000)

未知数の数はc1,c2,c3の3個、ランクは3なので、自由度0です。したがって

(c1,c2,c3)=(0,0,0)

となります。つまりe1,e2,e3は線形独立です。

具体例2

f1=(132)f2=(243)f3=(325)

f1,f2,f3の線形関係式は

c1f1+c2f2+c3f3=0

これを行列形式に変形して

(f1f2f3)(c1c2c3)=(000)

f1,f2,f3を成分表示にして

(123342235)(c1c2c3)=(000)

未知数の数はc1,c2,c3の3個、ランクは3なので、自由度0です。したがって

(c1,c2,c3)=(0,0,0)

となります。つまりf1,f2,f3は線形独立です。

線形従属の具体例

線形従属となる具体例2つです。

具体例1

g1=(134)g2=(246)g3=(325)

g1,g2,g3の線形関係式は

c1g1+c2g2+c3g3=0

これを行列形式に変形して

(g1g2g3)(c1c2c3)=(000)

g1,g2,g3を成分表示にして

(123342465)(c1c2c3)=(000)

未知数の数はc1,c2,c3の3個、ランクは2なので、自由度1です。任意定数tを使って

(c1,c2,c3)=(8t,7t,2t)

となります。つまりg1,g2,g3は線形従属です。

具体例2

h1=(111)h2=(111)h3=(111)h4=(111)

h1,h2,h3,h4の線形関係式は

c1h1+c2h2+c3h3+c4h4=0

これを行列形式に変形して

(h1h2h3h4)(c1c2c3c4)=(0000)

h1,h2,h3,h4を成分表示にして

(111111111111)(c1c2c3c4)=(0000)

未知数の数はc1,c2,c3,c4の4個、ランクは3なので、自由度は1です。

(c1,c2,c3,c4)=(t,t,t,t)

となります。つまりh1,h2,h3,h4は線形従属です。

線形結合で任意の元を表せるか

基底の条件2つ目の線形結合で任意の元を表せるかを調べます。

線形結合は線形関係式の右辺が変わった式です。線形空間Vの元a1,a2anと線形空間Vの任意の元vと実数c1,c2cnによって作られる以下の式を線形結合といいます。

c1a1+c2a2++cnan=v

vは任意の元なので線形空間Vのあらゆる場所を想定します。それでもc1,c2cnを調整して線形結合を成り立たせることができたら、線形結合で任意の元を表せると判断できます。

線形結合を解くときに非同次連立1次方程式が出てきます。不安な方は非同次連立1次方程式のページをご覧ください。

線形結合の具体例

線形独立であるe1,e2,e3f1,f2,f3について、線形結合かどうかを調べます。

基底が欠けた場合も含めて具体例3つです。

具体例1

e1=(100)e2=(010)e3=(001)v=(xyz)

e1,e2,e3の線形結合は

c1e1+c2e2+c3e3=v

これを行列形式に変形して

(e1e2e3)(c1c2c3)=(xyz)

e1,e2,e3を成分表示にして

(100010001)(c1c2c3)=(xyz)

拡大係数行列を階段行列に変形して(この例は変形しなくても階段行列になっています)

(100x010y001z)

これを解くと

(c1c2c3)=(xyz)

となります。このようなc1,c2,c3を用いれば線形結合を満たすためe1,e2,e3は任意の元を表せることが分かりました。

具体例2

f1=(132)f2=(243)f3=(325)v=(xyz)

f1,f2,f3の線形結合は

c1f1+c2f2+c3f3=v

これを行列形式に変形して

(f1f2f3)(c1c2c3)=(xyz)

f1,f2,f3を成分表示にして

(123342235)(c1c2c3)=(xyz)

拡大係数行列を階段行列に変形して

(123x342y235z)(123x0112x+z005x+y2z)

これを解くと

(c1c2c3)=15(14x+y+8z11x+y7zxy+2z)

となります。このようなc1,c2,c3を用いれば線形結合を満たすためf1,f2,f3は任意の元を表せることが分かりました。

具体例3

e1=(100)e2=(010)v=(xyz)

e1,e2の線形結合は

c1e1+c2e2=v

これを行列形式に変形して

(e1e2)(c1c2)=(xyz)

e1,e2を成分表示にして

(100100)(c1c2)=(xyz)

拡大係数行列を階段行列に変形して(この例は変形しなくても階段行列になっています)

(10x01y00z)

係数行列のランクより拡大係数行列のランクの方が大きいのでc1,c2は解なしとなります。

解なしでは線形結合を満たせないためe1,e2は任意の元を表せません。

見た目的にもe1,e2だけではvz成分が表せないので、任意の元を表すのは無理そうだと予想できます。

線形空間の次元

線形空間Vの次元は

dimV=n

と表し、基底の数がnに入ります。

e1,e2,e3が作る線形空間R3は、基底が3つあるので

dimR3=3

になります。

f1,f2,f3が作る線形空間R3dimR3=3です。

基底は   で囲って表現することが多いです。

同じ線形空間R3でもe1,e2,e3が基底になるときもあればf1,f2,f3が基底になるときもあります。

基底を明示したいときはe1,e2,e3のように表します。

まとめ

基底は以下の2つの条件を満たせばどんな定め方をしてもOKです。

  • 線形独立であること
  • 線形結合で任意の元を表せること

基底の数がn個のとき、その基底が作る線形空間Vの次元は以下の式で表されます。

dimV=n

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