こんにちはコーヤです。
このページでは、テイラー展開の無限級数を打ち切るランダウの記号の使い方と、極限の計算にテイラー展開を利用する方法を勉強します。
ランダウの記号の概要
ランダウの記号はテイラー展開の無限級数を打ち切るときに使われる記号です。
大文字のランダウの記号$O$と、小文字のランダウの記号$o$の2種類があります。
アルファベットの「オー」ではなくて、ギリシャ文字の「オミクロン」です。
(オーもオミクロンも見た目は一緒なので違いは分かりませんが…)
大文字のランダウの記号
$x=a$で関数$f(x)$をテイラー展開した時、別の関数$g(x)$を用いて
$$
\displaystyle\lim_{x\to a}
\left|
\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}
\right|
\leq
C
$$
を満たす定数$C$が存在する時、大文字のランダウの記号$O$を用いて
$$
f(x)=O(g(x))
$$
と表します。
$x\to a$のとき$f(x)$は$g(x)$と同じくらいの速度で収束・発散する、というのを表すのが大文字のランダウの記号です。
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left|
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
\right|
=
1
$$
この極限の公式は大文字のランダウの記号$O$を用いて
$$
\sin x
=
O(x)
$$
と表すことができます。
$x\to 0$のとき$\sin x$は$x$と同じくらいの速度で収束する、という意味です。
小文字のランダウの記号
$x=a$で関数$f(x)$をテイラー展開した時、別の関数$g(x)$を用いて
$$
\displaystyle\lim_{x\to a}
\left|
\displaystyle\frac{f(x)}{g(x)}
\right|
=
0
$$
を満たす時、小文字のランダウの記号$o$を用いて
$$
f(x)=o(g(x))
$$
と表します。
$x\to a$のとき$f(x)$は$g(x)$よりも速く収束する、というのを表すのが小文字のランダウの記号です。
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left|
\displaystyle\frac{\sin x-x}{x^2}
\right|
=
0
$$
この極限は小文字のランダウの記号$o$を用いて
$$
\sin x-x
=
o(x^2)
$$
と表すことができます。
$x\to 0$のとき$\sin x-x$は$x^2$よりも速く収束する、という意味です。
極限の計算にテイラー展開を利用する場合は小文字のランダウの記号が活躍します。
極限計算の例題
それでは例題2つで極限の計算をしてみましょう。ランダウの記号に慣れましょう。
例題1
$$
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
$$
極限が$x\to 0$なので、与えられた関数をマクローリン展開します。
$$
\sin x
=
x-\displaystyle\frac{1}{3!}x^3+\displaystyle\frac{1}{5!}x^5-\displaystyle\frac{1}{7!}x^7+\cdots
$$
を利用して
$$
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
=
1-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+\displaystyle\frac{1}{5!}x^4-\displaystyle\frac{1}{7!}x^6+\cdots
$$
となります。ここで
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left|
\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{5!}x^4-\displaystyle\frac{1}{7!}x^6+\cdots}{x^3}
\right|
=
0
$$
より
$$
\displaystyle\frac{1}{5!}x^4-\displaystyle\frac{1}{7!}x^6+\cdots
=
o(x^3)
$$
となります。マクローリン展開の結果をランダウの記号を用いて書くと
$$
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
=
1-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+o(x^3)
$$
となるので、与式は
$$
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
1-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+o(x^3)
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
$$
と書き換えることができます。ここで
$$
-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+o(x^3)
=
\alpha
$$
とします。すると
$$
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\alpha
=
0
$$
となります。
$o(x^3)$は$x^3$よりも速く収束する関数をまとめたものです。
$x\to 0$の極限のときは$x^3=0$に収束するより速く$o(x^3)=0$に収束します。
以上より
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
1-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+o(x^3)
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
1+\alpha
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left\{
\left(
1+\alpha
\right)
^{\frac{1}{\alpha}}
\right\}
^{\frac{\alpha}{x^2}}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
e^{\frac{\alpha}{x^2}}
\end{align}
$$
ここで$\displaystyle\frac{\alpha}{x^2}$について
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{\alpha}{x^2}
&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{-\displaystyle\frac{1}{3!}x^2+o(x^3)}{x^2}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
-\displaystyle\frac{1}{3!}
+
\displaystyle\frac{o(x^3)}{x^2}
\\\\&=
-\displaystyle\frac{1}{3!}
\\\\&=
-\displaystyle\frac{1}{6}
\end{align}
$$
となります。
$o(x^3)$は$x^3$よりも速く収束する関数をまとめたものです。
$x\to 0$の極限のときは$x^3=0$に収束するより速く$o(x^3)=0$に収束します。
なので分子の$o(x^3)$の収束は分母の$x^2$の収束よりも速いです。
この結果を代入して
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\left(
\displaystyle\frac{\sin x}{x}
\right)
^{\frac{1}{x^2}}
&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
e^{\frac{\alpha}{x^2}}
\\\\&=
e^{-\frac{1}{6}}
\end{align}
$$
となります。
例題2
$$
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{x^2-\sin^2 x}{x^2\sin ^2 x}
$$
極限が$x\to 0$なので、与えられた関数をマクローリン展開します。
$$
\sin x
=
x-\displaystyle\frac{1}{3!}x^3+\displaystyle\frac{1}{5!}x^5-\displaystyle\frac{1}{7!}x^7+\cdots
$$
ここで
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left|
\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{5!}x^5-\displaystyle\frac{1}{7!}x^7+\cdots}{x^4}
\right|
=
0
$$
より
$$
\displaystyle\frac{1}{5!}x^5-\displaystyle\frac{1}{7!}x^7+\cdots
=
o(x^4)
$$
となります。マクローリン展開の結果をランダウの記号を用いて書くと
$$
\sin x
=
x-\displaystyle\frac{1}{6}x^3+o(x^4)
$$
となるので
$$
\begin{align}
\sin ^2 x
&=
\left\{
x-\displaystyle\frac{1}{6}x^3+o(x^4)
\right\}^2
\\\\&=
x^2
-\displaystyle\frac{1}{3}x^4
+\displaystyle\frac{1}{36}x^6
+\left(2x-\displaystyle\frac{1}{3}x^3\right)o(x^4)
+\left\{o(x^4)\right\}^2
\end{align}
$$
となります。この結果にもランダウの記号を使います。
$$
\displaystyle\lim_{x\to 0}
\left|
\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{36}x^6+\left(2x-\displaystyle\frac{1}{3}x^3\right)o(x^4)+\left\{o(x^4)\right\}^2}{x^4}
\right|
=
0
$$
より
$$
\displaystyle\frac{1}{36}x^6+\left(2x-\displaystyle\frac{1}{3}x^3\right)o(x^4)+\left\{o(x^4)\right\}^2
=
o(x^4)
$$
となります。
$o(x^4)$は$x^4$よりも速く収束する関数をまとめたものです。
$\left\{o(x^4)\right\}^2$はもちろん$x^4$より速く収束します。
この結果を使って$\sin ^2 x$をマクローリン展開すると
$$
\begin{align}
\sin ^2 x
&=
x^2
-\displaystyle\frac{1}{3}x^4
+\displaystyle\frac{1}{36}x^6
+\left(2x-\displaystyle\frac{1}{3}x^3\right)o(x^4)
+\left\{o(x^4)\right\}^2
\\\\&=
x^2-\displaystyle\frac{1}{3}x^4+o(x^4)
\end{align}
$$
となります。与式へ代入して
$$
\begin{align}
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{x^2-\sin^2 x}{x^2\sin ^2 x}
&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{3}x^4-o(x^4)}{x^4-\displaystyle\frac{1}{3}x^6+x^2o(x^4)}
\\\\&=
\displaystyle\lim_{x \to 0}
\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{3}-\displaystyle\frac{o(x^4)}{x^4}}{1-\displaystyle\frac{1}{3}x^2+\displaystyle\frac{o(x^4)}{x^2}}
\\\\&=
\displaystyle\frac{1}{3}
\end{align}
$$
です。
まとめ
ランダウの記号を用いてテイラー展開の無限級数を打ち切ります。
ランダウの記号は打ち切られた項の収束・発散速度を表すので、極限の計算に利用することができます。
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