こんにちはコーヤです。
このページでは、n次導関数を計算する方法として、数学的帰納法とライプニッツの微分公式の2パターンを勉強します。テイラー展開の分野でn次導関数が必要になります。
n次導関数の概要
関数$f(x)$を1階微分したら$f^{(1)}(x)$になり、2階微分したら$f^{(2)}(x)$になり、$n$階微分したら$f^{(n)}(x)$になります。
この$f^{(n)}(x)$が$n$次導関数です。
$n$次導関数の求め方は2パターンあります。
- 数学的帰納法を使う
- ライプニッツの微分公式を使う
それぞれ計算方法を見ていきましょう。
方法1. 数学的帰納法を使う
以下の関数の$y^{(n)}$を求めてみます。
$$
y
=
\displaystyle\frac{1}{1-x}
$$
$n$次導関数の形を予想するために、手計算で3次導関数くらいまで求めてみます。
$$
\begin{align}
y
&=
(1-x)^{-1}
\\\\
y^{(1)}
&=
(1-x)^{-2}
\\\\
y^{(2)}
&=
2(1-x)^{-3}
\\\\
y^{(3)}
&=
6(1-x)^{-4}
\end{align}
$$
この結果より$k$次導関数の形を以下のように仮定します。
$$
y^{(k)}
=
k!(1-x)^{-k-1}
$$
$k+1$次導関数を計算すると
$$
\begin{align}
y^{(k+1)}
&=
k!(-k-1)(1-x)^{-k-2}(-1)
\\\\&=
(k+1)!(1-x)^{-(k+1)-1}
\end{align}
$$
これより$n$次導関数は
$$
y^{(n)}
=
n!(1-x)^{-n-1}
$$
となります。
方法2. ライプニッツの微分公式を使う
まずはライプニッツの微分公式を示します。$f(x)$と$g(x)$の積を$n$階微分する公式です。
$$
(f \cdot g)^{(n)}
=
\displaystyle\sum_{k=0}^n
{}_n \mathrm{C}_k
f^{(k)}g^{(n-k)}
$$
二項定理と同じ形をしています。
この公式を使って以下の関数の$y^{(n)}$を求めてみます。
$$
y
=
\displaystyle\frac{x^2}{1-x}
$$
ライプニッツの微分公式を使うために$f \cdot g$の形に$y$を分解します。
$$
\begin{align}
f(x) &= x^2
\\\\
g(x) &= (1-x)^{-1}
\end{align}
$$
分解のコツは「微分すると0になる関数」「微分しても0にならない関数」で分解することです。
$f(x)=x^2$は微分すればいつか0になります。
$g(x)=(1-x)^{-1}$は数学的帰納法で求めたとおり、何回微分しても0になりません。
このように分解すると上手く計算できる理由は、この後を読み進めると分かります。
次に$f(x)$と$g(x)$それぞれの$n$次導関数を求めます。
$$
\begin{align}
f(x)
&=
x^2
\\\\
f^{(1)}(x)
&=
2x
\\\\
f^{(2)}(x)
&=
2
\\\\
f^{(3)}(x)
&=
0
\\\\
\vdots
\\\\
f^{(n)}(x)
&=
0
\end{align}
$$
$$
\begin{align}
g(x)
&=
(1-x)^{-1}
\\\\
g^{(1)}(x)
&=
(1-x)^{-2}
\\\\
g^{(2)}(x)
&=
2(1-x)^{-3}
\\\\
g^{(3)}(x)
&=
6(1-x)^{-4}
\\\\
\vdots
\\\\
g^{(n)}(x)
&=
n!(1-x)^{-n-1}
\end{align}
$$
この結果を公式に代入します。
$$
\begin{align}
y^{(n)}
&=
\displaystyle\sum_{k=0}^n
{}_n \mathrm{C}_k
f^{(k)}g^{(n-k)}
\\\\&=
{}_n \mathrm{C}_0
fg^{(n)}
+
{}_n \mathrm{C}_1
f^{(1)}g^{(n-1)}
+
{}_n \mathrm{C}_2
f^{(2)}g^{(n-2)}
+
{}_n \mathrm{C}_3
f^{(3)}g^{(n-3)}
+
\cdots
+
{}_n \mathrm{C}_n
f^{(n)}g
\end{align}
$$
ここで
$$
\begin{align}
f^{(3)}(x)&=0
\\\\
f^{(4)}(x)&=0
\\\\
\vdots
\\\\
f^{(n)}(x)&=0
\end{align}
$$
より
$$
\begin{align}
y^{(n)}
&=
{}_n \mathrm{C}_0
fg^{(n)}
+
{}_n \mathrm{C}_1
f^{(1)}g^{(n-1)}
+
{}_n \mathrm{C}_2
f^{(2)}g^{(n-2)}
\end{align}
$$
となります。後は各項を計算していきます。
$$
\begin{align}
y^{(n)}
&=
{}_n \mathrm{C}_0
fg^{(n)}
+
{}_n \mathrm{C}_1
f^{(1)}g^{(n-1)}
+
{}_n \mathrm{C}_2
f^{(2)}g^{(n-2)}
\\\\&=
1 \cdot x^2 \cdot n!(1-x)^{-n-1}
+
n \cdot 2x \cdot (n-1)!(1-x)^{-n}
+
\displaystyle\frac{1}{2}n(n-1) \cdot 2 \cdot (n-2)!(1-x)^{-n+1}
\\\\&=
x^2 \cdot n!(1-x)^{-n-1}
+
2x \cdot n!(1-x)^{-n-1}(1-x)
+
2 \cdot n!(1-x)^{-n-1}(1-x)^2
\\\\&=
n!(1-x)^{-n-1}
\left\{
x^2+2x(1-x)+(1-x)^2
\right\}
\\\\&=
n!(1-x)^{-n-1}
\end{align}
$$
これで$n$次導関数が求まりました。
ライプニッツの微分公式の注意点
数学的帰納法の例で使った関数の$n$次導関数は
$$
\begin{align}
y
&=
\displaystyle\frac{1}{1-x}
\\\\
y^{(n)}
&=
n!(1-x)^{-n-1}
\end{align}
$$
ライプニッツの微分公式の例で使った関数の$n$次導関数は
$$
\begin{align}
y
&=
\displaystyle\frac{x^2}{1-x}
\\\\
y^{(n)}
&=
n!(1-x)^{-n-1}
\end{align}
$$
でした。
元は異なる関数なのに$n$次導関数が一致しています。
本当に異なる関数でも$n$次導関数は一致するのでしょうか。
試しに2階微分まで手計算してみると
$$
\begin{array}{cc|ccc|cc}
n=0
&&&
n=1
&&&
n=2
\\\\
y=\displaystyle\frac{1}{1-x}
&&&
y’=\displaystyle\frac{1}{(1-x)^2}
&&&
y'{}’=\displaystyle\frac{2}{(1-x)^3}
\\\\
y=\displaystyle\frac{x^2}{1-x}
&&&
y’=\displaystyle\frac{x(2-x)}{(1-x)^2}
&&&
y'{}’=\displaystyle\frac{2}{(1-x)^3}
\end{array}
$$
1階微分は異なり、2階微分は一致しています。2階微分が一致したので3階以降も一致します。
1階微分が異なる理由は、ライプニッツの微分公式は一定以上$n$が大きくないと成り立たないという性質があるからです。
今回の例でいうと、途中で${}_n \mathrm{C}_2$の計算を行っています。$n=0$や$n=1$では${}_n \mathrm{C}_2$が計算できません。
つまり、ライプニッツの微分公式が正しく計算できているのは$n \geq 2$の時です。
たしかに手計算の結果も$n\geq 2$から一致しています。
まとめ
$n$次導関数の求め方は2パターンあります。
- 数学的帰納法を使う
- ライプニッツの微分公式を使う
ライプニッツの微分公式は以下の式です。
$$
(f \cdot g)^{(n)}
=
\displaystyle\sum_{k=0}^n
{}_n \mathrm{C}_k
f^{(k)}g^{(n-k)}
$$
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