関数の極限の計算方法

こんにちはコーヤです。

このページでは、式変形と公式を組み合わせて関数の極限を求める正攻法を勉強します。ロピタルの定理やテイラー展開で極限を求めるよりも楽に計算できます。

数列の極限と関数の極限の違い

関数の極限は数列の極限の延長線上です。計算方法も似たような感じになります。

1つだけ大きな違いがあり、数列の極限はnのパターンしかありませんでしたが、関数の極限はxxπなどいろんなパターンがあることです。

計算方法が思いつかない場合は、新たに変数を作ってxx0のような見慣れた極限に変形することが重要です。

関数の極限の計算方針3種類

関数の極限の計算は主に3種類の方針があります。

  1. 式変形と公式を組み合わせる正攻法
  2. ロピタルの定理を使う
  3. テイラー展開を使う

このページでは1の正攻法にフォーカスして勉強します。

ロピタルの定理は使用できるかどうかの判断が面倒、テイラー展開は計算量が多い、というデメリットがありますが、正攻法にはデメリットがありません。

正攻法の式変形パターン7つ

正攻法の頻出パターンを7つ列挙します。全て解けるようになっておきましょう。

  1. 約分
  2. 有理化
  3. 三角関数
  4. 指数関数・対数関数
  5. 逆三角関数
  6. 双曲線関数
  7. 片側極限

パターン1. 約分

最初に疑うべきは約分できるかどうかです。

(1)limx1x21x1(2)limxπ1+cosxsin2x

(1)は分母分子をx1で約分することで計算できるようになります。

limx1x21x1=limx1(x1)(x+1)x1=limx1(x+1)=2

(2)はsin2xcosxで表せば約分できるようになります。

limxπ1+cosxsin2x=limxπ1+cosx1cos2x=limxπ1+cosx(1+cosx)(1cosx)=limxπ11cosx=12

パターン2. 有理化

ルートがあるときは有理化するパターンがほとんどです。

xのときはx=x2となることに注意が必要です。最初にx=tとしてtの極限に変換すると楽です。

(1)limx01+x1xx(2)limxx+1x2+1x

(1)は有理化すればおしまいです。

limx01+x1xx=limx021+x+1x=1

(2)は符号ミス頻発問題です。最初にx=tと変換してtの極限に変換します。

limxx+1x2+1x=limtt+1t2+1+t

分母分子をtで割って

limtt+1t2+1+t=limt1+1t1+1t2+1=12

となります。

x=tと変換しない場合は以下のようになります。x=x2になることに注意です。

limxx+1x2+1x=limx1+1xx2+1x1=limx1+1xx2+1x21=limx1+1x1+1x21=12

パターン3. 三角関数

三角関数の極限の公式は以下3つです。

limx0sinxx=1limx0tanxx=1limx01cosxx2=12

この公式が使えるように式変形をしていけば極限が求まります。

(1)limx01sinx1tanx(2)limx14πsinxcosx4xπ

(1)は式変形して公式を使える形にします。

limx01sinx1tanx=limx01sinxcosxsinx=limx01cosxsinx=limx01cosxx2xsinxx=1210=0

(2)は分子の三角関数を合成します。

limx14πsinxcosx4xπ=limx14π2sin(x14π)4(x14π)

ここでt=x14πとして

limx14π2sin(x14π)4(x14π)=limt02sint4t=24

パターン4. 指数関数・対数関数

指数関数と対数関数の極限の公式は以下3つです。

limx0(1+x)1x=elimx0log(1+x)x=1limx0ex1x=1

この公式が使えるように式変形をしていけば極限が求まります。

(1)limxx{log(x+1)logx}(2)limx(x1x+1)x

(1)は式変形して公式を使える形にします。

limxx{log(x+1)logx}=limxxlogx+1x=limxlog(1+1x)1x=1

(2)は分子を分母で割って変形します。

limx(x1x+1)x=limx(12x+1)x=limx(1+2x+1)x+122xx+1=limxe2xx+1=e2

パターン5. 逆三角関数

逆三角関数が出てきたらarcsinx=tのようにおくだけで三角関数のパターンに帰着できます。

(1)limx0arctan1x(2)limx0arcsinxtanx

(1)はarctanxのグラフの概形が思い浮かべば瞬殺です。

arctan1x=tとするとt12πになります。

limx0arctan1x=limt12πt=12π

(2)も同様にarcsinx=tとおいてt0の極限に変形します。

arcsinx=tよりsint=xなのでxsint=1となることを利用します。

limx0arcsinxtanx=limt0ttanx=limt0ttanxxsint=limt0tsintxtanx=11=1

パターン6. 双曲線関数

双曲線関数は指数関数に変形するだけです。

sinhx=exex2coshx=ex+ex2tanhx=exexex+ex

この変形で指数関数のパターンに帰着させます。

(1)limx0sinhxx(2)limx0coshx1x2

(1)は変形してから分母分子にexをかけます。

limx0sinhxx=limx0exex2x=limx0e2x12xex=limx0e2x12x1ex=11=1

(2)は因数分解が必要です。

limx0coshx1x2=limx0ex+ex22x2=limx0e2x2ex+12x2ex=limx0(ex1)22x2ex=limx0(ex1x)212ex=1212=12

パターン7. 片側極限

極限の前後で関数の振る舞いが異なるときは右側極限と左側極限に分けて考えないといけません。

右側極限と左側極限の値が一致すればその値を極限として扱います。一致しなければ極限なしとなります。

(1)limx01x(2)limx01x2

(1)と(2)のグラフをそれぞれ示します。

グラフより(1)は

limx+01x=limx01x=

右側極限と左側極限が一致しないので極限なしです。

グラフより(2)は

limx+01x2=limx01x2=

右側極限と左側極限が一致するので

limx01x2=

です。

両方ともx=0のときは定義されない関数ですが、x0の値とx=0の値は関係ありません。

関数の極限の例題

それでは例題6つで関数の極限を求めてみましょう。

例題1

limx0x2log(1cosx)

cosxの公式が使えるように式変形します。logxの公式は使いません。

limx0x2log(1cosx)=limx0x21cosx(1cosx)log(1cosx)=limx02(1cosx)log(1cosx)

ここで1cosx=tとおいてt0の極限に変形します。

1cosx1よりt0t+0になります。

limx02(1cosx)log(1cosx)=limt+02tlogt=0

となります。

tlogtの部分は、logtと発散する速度よりt0に収束する速度のほうが速いです。

したがってtlogt0になります。

例題2

limx0xπx1

この問題はハッタリみたいな問題です。π=elogπと変形すればすぐに公式が使えます。

limx0xπx1=limx0x(elogπ)x1=limx0(logπ)xe(logπ)x11logπ=11logπ=1logπ

例題3

limx(cos1x)x2

見た目的に三角関数の公式を使いたくなりますが、指数関数の公式を使えるように変形するのがポイントです。

1+t=cos1xとおいてt0の極限に変形します。

1cos1x1よりt0t0になります。

limx(cos1x)x2=limt0(1+t)x2=limt0{(1+t)1t}tx2=limt0etx2

ここでtx2の部分を考えます。

limt0tx2=limx(cos1x1)x2=limx1cos1x(1x)2=12

これを代入して

limt0etx2=e12=1e

となります。

例題4

limx0tanh(arcsinx)x

逆三角関数を見かけたら文字でおくところから始めます。それから双曲線関数を処理しましょう。

arcsinx=tとしてt0の極限に変形します。

limx0tanh(arcsinx)x=limt0tanhtsint=limt0etetet+et1sint=limt0e2t1e2t+11sint=limt0e2t12t2e2t+1tsint=111=1

例題5

limxx1x

一見難しそうですが、極限の値をpとして式変形します。

p=limxx1x

両辺logを取って

logp=limxlogx1x=limxlogxx=0

対数関数よりも冪関数の方が発散の速度が速いので0になります。

logを取ると以下の対応関係なので

logp=0p=1

以上の結果より

limxx1x=1

です。

例題6

limx0(sinxx)1x2

残念ながら正攻法では解けません。

こういう場合はロピタルの定理かテイラー展開の出番です。

まとめ

正攻法の頻出パターンを7つ列挙します。

  1. 約分
  2. 有理化
  3. 三角関数
  4. 指数関数・対数関数
  5. 逆三角関数
  6. 双曲線関数
  7. 片側極限

公式が使えるように式変形を工夫して、知っているパターンに帰着させたら計算できます。

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